2007.1.14 更新
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一言書評
新書・専門書
『ピアノを弾く身体』 監修・岡田暁生 春秋社 |
ピアノの構造の変化から、各時代の演奏の技法、メルロ=ポンティの身体論、ジャンケレヴィッチの音楽論まで、ピアノを弾く「身体」という観点から挑んだ、刺激的な論文集。 「音楽の本質は、響きか、楽譜か」と問われれば、どう答えるだろう。音楽の愛好家は耳で聴く「響き」を支持し、かたや多くの作曲者や学者は「楽譜」を支持するだろう。というのはしばしば指摘されてきた論点だが、そこには、実は大きな見落としがある!と声高に問い直すのがこの『ピアノを弾く身体』だ。 「耳で聴く響き」「目で読む楽譜」と並んで、最も重要にして、かつ最も研究から遠ざけられていたのは、「手で(身体で)弾く」という観点である。という指摘は、言われてみれば当たり前なのだが、体系的な研究としてはエアポケット(空白)となっているようだ。 執筆者たちのスタンスは、基本的には「楽譜に忠実で緻密な演奏」よりも、「危険性を持つ魅せる演奏」を評価することで一致しているように見える。たとえばリストのような、「演出された奇術」により聴衆を圧倒するヴィルトゥオーソ(技巧的な名演奏家)たちについて、その否定的な「演出された奇術」という評価を逆手にとって、それこそ演奏の神髄の一つである、という再評価をくだすあたり、なかなか挑発的で考えさせられるところがある。 一読後には、「あーほんとだ、自分も指で鍵盤弾いてるなー、こーやったらこんな音がてるんだなー」と、自分の指を、手を、身体をあらためて強く意識しながら弾くようになってしまうという、恐ろしい一冊である(笑)(2007.1.11読了) |