2006.1.1 更新
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一言書評
日本の小説・随筆


陳舜臣 『秘本三国志』新潮文庫


中国、三国時代に題をとった歴史小説。当時勃興しつつあった、道教の一派、五斗米道(ごとべいどう)を軸にして物語が進むという、異色な三国志。勿論、劉備や曹操、諸葛亮といった有名どころが主人公格で描かれてはいるのだが、筆者が配した架空の五斗米道信者の目を通して様々な事を描くため、従来の「政治的・軍事的に上から俯瞰する」というタイプではなく、「信仰を軸に、生活の匂いを感じさせ、下から見上げる」ような視点となっているのが新鮮だ。そのためか、物語の進展にあわせて各章の末尾には、筆者のまとめというか、歴史観を付け加えて物語の全貌をとらえなおす作業を行っている。中国の正史に見える「論賛」の形式を模したものだが、僕には物語の臨場感を大いに損なわせていると感じられた。歴史を訴えたいのか、小説として描くのか、中途半端なのが惜しまれる。(1988 読了)



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