2000.12.3 更新
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回顧録
〜求道者讃歌編〜
前田智徳(C) TOMONORI MAEDA
背番号/1
生年月日/S46.6.14
身長・体重/175cm 80kg
タイプ/右投左打
出身校/熊本工高
出身地/熊本県
阪神ファンだけど、最も好きな選手は誰かと聴かれれば、広島の前田だ。求道者的な野球への取
り組み方、見ている者まで息苦しくさせてしまうキャラクターは、厳しいプロの世界でも際立っている。アキレス腱断裂の大けがのとき、「いっそもう片方も切れればバランスがとれるのに」と言ったという。
そんなことを言うから、今季もう片方のアキレス腱まで痛めてしまったのだ、と言うなかれ。松井(G)「日本で一番いいバッターじゃないですか。外野を守っていても、前田さんはいつでも打ちそうな気がする」、鈴木尚(YB)「(首位打者獲得時)でも今年は前田さんがリタイアしてしまいましたから、本当の意味の首位打者だとは」、それに投手の武田(D)「左打者では前田。あいつは間違いなく天才」、引退した落合「ケガをする前は最もメジャーに近かった男」「見ていて意味のある練習をしているのは、前田とイチローだけ」など、多くの人が天才だと言ってはばからない前田。
猛打賞を放っても、一塁上で首を傾げてしかめっつらして、一塁コーチを困らせてしまう、そんな前田に陰ながらエールを送りたい。ゴルフのコンペのときに、長嶋監督に「ん〜、野球やってるときと違って、明るくていい感じですねえ〜」と言われてしまうほど、相手ベンチにまでも重圧を与えている前田。でもへたに「頑張って」と声をかけると、いつぞやの女性ファンのように、「お前に言われんでも分かっとるわい!」と怒鳴られてしまうので気を付けよう。もっとも、そう怒鳴ったときはマスコミにもたたかれて、「あとで本当に落ち込んでましたよ(OB・豊田泰光氏)」と言う。ファンあってのプロ野球選手なんだし、そんなときは、いっそカズ山本のように、「おう、お前も頑張れ!」と言い返すぐらいの余裕があれば、とも思うけれど、でも周囲にも気が回らず、野球に埋没して理想を追い求め続けている前田もマル。
プロ入りして間もない頃、エラーをしたあと、ベンチに戻っても泣きじゃくっていたという。そして泣きながら次の打席に向かい、なんとホームラン、泣きながらダイヤモンドを回ったとか。エラーして泣きじゃくり、あまつさえホームランを打って帰ってくる前田を見て、ナインはさぞかし当惑したことだろう。その頃は前田にもそれほど注目していなかったのだが、そのシーンを見てみたかった。ちなみにバカバカしいけど嬉しかったのは、夢の中で前田とキャッチボールをしたときだ。ケガが最大の敵の前田、来季はなんとか彼の切望する全試合出場がかなうよう祈っている。(2000.12.3)