2009.8.9 更新
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Essay (一言書評)
Literature (文学)


下條信輔  『〈意識〉とは何だろうか 脳の来歴 知覚の錯誤
 
講談社現代新書
 
「意識」の所在はどこにあるのか? まがうかたなき実在である意識が認識することによって、はじめてそれをとりまく環境世界が成立する、という実在論・唯心論的な立場と、実体として世界は存在しており、意識は環境の中で経験的に形成される、という経験論・唯物論的な立場。筆者は、そのどちらかに傾斜することをせずに、両者の橋渡し的な理論を提唱する。すなわち、筆者が「脳の来歴」と呼ぶところで、記憶・意識は脳にだけ内在するものでもなければ、完全に外界によって形成されるものでもなく、両者の曖昧なバランスの中に成立するという。視覚的な錯誤から書きはじめ、認識の錯誤へと話題をスライドさせつつ丁寧に構築された論理は、説得力に富む。科学的・客観的にしか確認し得ない「無意識」の研究を一層促進し、それによって外堀を埋める形で、主観の問題であり、科学的な研究対象には適さない「意識」のあり方を浮き彫りにする、という明確な指針を打ち出しているのも、一つの卓見であろう。付加的ではあるが、最終章では、同書が扱ってきた観念的な問題を、現実社会での問題にリンクさせて考察を進めている。これも筆者の学者としてのスタンスの現れである。(2001.1.12)





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