2009.8.9 更新
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Essay (一言書評)
Ciname (映画)



『SAYURI』



望まずして芸者の世界に入ることとなった「SAYURI」と、彼女をとりまく芸者たちの一代記。

といっても扮する訳者は、いずれも中国人にて、けなげな主演「さゆり」は章子怡(チャン・ツーイー)、その向こうを張る「初桃」は鞏俐(コン・リー)。義理と人情をわきまえた実業家「会長」は渡辺謙、無骨な友人「延(のぶ)さん」は役所公司、といった豪華なラインナップ。

花形の芸者となりつつある「さゆり」と、その前のトップであった「初桃」のせめぎあいを描くが、二人は反目しあいながらも、いずれも芸者であるがゆえに封じ込めねばならない女の悲しみをそれぞれに生きる、という物語。

周知の通り、チャン・ツーイーは『初恋の来た道』で張芸謀(チャン・イーモウ)に見出された女優。農村を舞台にして、現代社会では死滅したと思われるような圧倒的に純情・可憐な少女を演じたことは、記憶に新しい。その後「アジアン・ビューティー」のCM、そして『2046』を経て、ついに芸者役を演じるようになったのは、実は野心家でもある彼女にとって、ある意味ふさわしいイメージの追加と言えるだろう。

映画の中盤、従来のトップ芸者「初桃」と、新興スター「さゆり」が同じ宴席に呼ばれ、青くほの暗い敵意を交わす場面がある。「さゆり(チャン・ツーイー)」は客の面前で「初桃(コン・リー)」をやりこめるのだが、その際の会話の一部に、「さゆり」が「初桃」に対して、「あなたは昔の芸者、昔の、昔の、昔の、大昔の…」としずかに、粘着質に、長い時間をかけて言うシーンがある。そのシーンの後、「さゆり」は「初桃」に髪を引っ張られて引きずり回され、二人の反目はやがて殴り合いにまで昂じてゆくのだが、ふと思った。チャン・ツーイーが『初恋の来た道』で張芸謀に抜擢される前、コン・リーも同じく張芸謀の『赤いコーリャン』で抜擢されて女優への道を歩み始めたのではなかったか。長い時間をはさんで、この無名の二人が抜擢されたとき、二人の雰囲気が似ている、張芸謀の好みなのだろう、と噂されたものだ(実際にはだいぶん異なると思うが)。それを思うと、「あなたは昔の芸者!」というセリフを吐くチャン・ツーイーと、それをきくコン・リーの間に燃え上がる、一種異様な緊張感にリアリティを感じてしまうのは、うがちすぎだろうか。

基本的には全て英語なので、日本人が見ると違和感があるのは否めない。とはいうものの、芸者とは何か、という抽象的な理念を深追いするのではなく、実際に生きた女たちの葛藤をそのまま描こうとしており、テンポもよいので、その点では見る者を失望させたり、失笑を買ったりするということはあまりないだろう。 (2006.1.6 blog☆diaryより)



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