2009.9.5 更新
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観戦記
Amazing Baseball !

輝けるドロー!

2009年9月4日 東京ドーム
巨人 対 ヤクルト

 9月4日(金)の東京ドーム、いままで観戦したなかで、最上級にAmazing (驚愕!)な試合の一つでありました。天井直撃弾2発、見たこともないような超遅球、危険球、延長12回、試合時間5時間半、、45人登場の総力戦、10年ぶりの捕手登場。というわけで、阪神ファンによる巨人vsヤクルト戦の観戦レポートです(笑)


巨人首位、ヤクルトも上位、くわえて花金(死語?)だけあり、球場はまずまずの盛況。これじゃあインフルエンザも流行るわ……というか、観客のなかには学級閉鎖中の子供も絶対いるんだろうな、と思いつつ観戦。

宮本(S)は、四球に犠打にタイムリーに、前打者デッドボール直後の初球ねらい打ちなど、さすがに野球を知っているいい仕事をしてるなあ、と関心させられたり、7回表・2死満塁のピンチに登板した山口(G)が、高めのつり球で見事に福地(S)をピッチャーゴロに打ち取った! と思ったらグラブではじいてエラー・失点してしまったり、かと思えば、その直後にセンターでやや前進守備をしていた松本(G)が、田中浩(S)のあわやフェンス直撃・走者一掃の長打かと思われるあたりを見事に好捕したり、好調の亀井(G)が初球にセーフティバントを決めたり、途中出場の谷(G)がしぶとくヒットを放ったり……と、見ていて退屈しない面白い試合展開。

ヤクルト先発のユウキは、ワンバウンドを恐れずに低めをつく投球で、捕手・相川も後ろにそらさずによく守っていた。ちなみに巨人の捕手は鶴岡であったので、両軍の捕手とも横浜から移籍しているという異色のスタメン対決でもあり、その点も興味をそそられた。

見所満載の試合のなかでも最初の驚きは、2回裏、巨人の阿部(ファースト6番)の第一打席のこと。カウント1−1からの3球目をたか〜く打ち上げたと思ったら、天井の照明を直撃してヒットに。天井直撃弾を初めて目撃した。

そして、ユウキ小笠原(G)の対決。

ユウキは、オリックスからトライアウトを経てヤクルトの育成選手となり、そこから一軍へとはい上がってきた投手だ。彼の投球を初めて見たが、相川との信頼関係もあるのだろう、修羅場をくぐった経験はダテではなく、十二分に人を食った投球術を披露してくれた。

とりわけヤクルトの2点リードで迎えた3回裏、2アウトランナー2塁(松本)の場面で、打席には小笠原(第2打席)。投じた初球、見たこともないような、蝿が15匹くらいとまっているのがはっきり見える(笑) 山なりの超超スローボール。ドーム全体から「おお〜!?」というどよめきが起こり、打席で構えていた小笠原の腰がひけているのが分かった。

スピードガンでの測定ができなかったほどで、見た感じでは、60キロ〜80キロほどではなかっただろうか。バッティングセンターでも見ないほどの遅球であった。ヤフースポーツの一球速報でも、球種は「特殊球」とされ、球速は示されていない。

結局、小笠原は、その後に続けてストレートを4球投じられて、タイミングがあわないまま三振に打ち取られた。ユウキのストレート自体は140キロ前後だが、超遅球との球速差はおそらく60〜70キロほど。いわば120キロの変化球のあとに180キロの剛速球と向かい合うような体感にもなったであろう。はたで見ていてたまげたのだから、打席の小笠原のとまどいは想像を絶したであろう。

そんな小笠原の次の打席(6回裏、1死・走者無し)、ユウキがどのように攻めるのか、観客が興味津々と見守るなか、投じられた初球は、またしても球速判定不能の「特殊球」! 小笠原は手を出さずに見送って1ストライク。

思えらく、球界の四番にもなろうかという打者(巨人では三番だが(笑))に、2打席続けてこういう投球は、本当は失礼なんじゃないだろうか、とも思われたが、勝負事なのでそこは仕方無い。むしろ小笠原の方でも、「こういうことを何度もしてくるんだな」と分かり、次には仕留めてやろうと心構えをしているんだろうな、と思いつつ、固唾(かたず)を呑んで見守るなか、第2球は外角低めのフォークでボール、カウント1−1。そして3球目、またしても高めの山なり超遅球。おそらく小笠原は打ってやろうと思っていたのだろう、投じられた瞬間、体がぴくりと動いた。しかし、まだ球がマウンドから離れたばかりなので、体勢を立て直し、もう一度打ち直そうとして始動しかかった。……のだが、それでもまだ球が小笠原の手元まで到達しておらず、結局、腰が引けた体勢のまま、高めのストライクを、三度(みたび)見逃すこととなった。

2度もスイングをしかける動作をしても、なお打者の手元に届かない球が、この世に存在することを知った。カウント2−1と追い込んだユウキは、ここからは前打席と同様、140キロ前後のストレートで押すことになる。巨人ファンならずとも、「うわー、ユウキって無礼な投球するんだなー」と感心するやらあきれるやら(笑)、でも主軸打者ならば、そういう小細工(こざいく)は打ち砕いて欲しい、と観客の多くが臍(ほぞ)を噛む想いで見つめるなか、カウント2−2からの5球目、やってくれました小笠原、139キロのストレートをライトフェンス際にたたき込む、28号ソロホームラン! 割れんばかりの歓声、推(お)して知るべし!

その昔、小笠原が日ハムでまだレギュラーに定着しておらず、代打でようやく使われるようになった頃、ドームで2塁打を放った打撃を見たときに、「懐(ふところ)が大きい構えで、思い切ったスイングをする打者だな」 と印象に残ったのが、彼を見た最初であったが、以後、観戦するたびに活躍していて感心させられる。1試合3ホーマーを見たこともあったが、やっぱり小笠原は凄いなあ、と舌を巻くばかりだ。FAのときに阪神に来てくれていたら………(心の声、以下省略)

さて、アメージングは終わらない。ヤクルト1点リードの3−2で迎えた9回裏2アウト・ランナー3塁で、打席には小笠原。いやがおうでも高まる期待を受けて、ヤクルト4番手投手・松岡、渾身のストレート(148km)をフルスイングしたが、ファースト後方に高くあがる飛球を打ち上げてしまった。「あー、終わったー」とドームにため息が溢れようとしたとき、あれ、あれあれ、という間に打球は高く上り続け、またしても天井直撃、角度が変わって落下する球を追い切れずに、ファーストとライトが交錯して落球、かくて同点に! 1試合で2度の天井直撃弾とは! 「野球は9回裏2アウトから」を地でいくトラブル、ドームの沸点はここに定まった。

小笠原談、「ツイてるとしか言いようがない。捕られる、と思ったら落ちた。ファンの方の気持ちがああしてくれたのかな」。

しかし、両軍とも決め手を欠き、結果からいえば、3−3のまま延長12回引き分けに終わった。10回から12回まで、スコアボードには0行進が続く。残塁も多く、拙攻続きであるとも言えなくはない。登板した投手は、両軍でのべ15名! 投手交代だけでも相当の時間を要し、時計は11時27分、試合時間は実に5時間27分にも及んだ。ほとんど2試合分にも相当する長丁場(ながちょうば)である。

だが、この日、危険な気まぐれを楽しむ野球の神様は、観客を最後まで飽きさせてくれなかった。終電が気になる試合終了まで、大部分の観客が球場で観戦していたこの試合、12回の土壇場(どたんば)にとどめのアメージングが現前する。

やや遡(さかのぼ)る11回裏、ファーストで出場していた阿部(G)はすでにベンチに退いており、キャッチャーは鶴岡から加藤に代わっていた。その加藤が打席に立つと、高木(S)が投じた3球目のストレートが頭部を直撃した。高木は危険球で退場。加藤は自分で歩いてベンチに下がれたので、大怪我ではないとよいのだが、と思って見ていたのだが、そのとき、ふと気づく。あれ、巨人のキャッチャー、3人ともベンチに下がっちゃったんじゃない…? そうすると、キャッチャー経験者は小笠原か木村拓だが…… 球場のファンの多くは、その時点ではまだその事に気づいていない様子であったが、12回表になって、ウグイス嬢のコール「キャッチャー・木村」、その瞬間に、沸点再来!

木村拓(37)が、ピッチャー以外の全てのポジション経験を持つスーパー・ユーティリティープレーヤーであることは知られている。それにしてもキャッチャーの守備につくのは、広島時代の1999年7月6日以来、実に10年ぶりのこと。木村拓は、加藤が退場したと知るや、「オレしかいないじゃん!」とブルペンに走ったという。

大急ぎで、鶴岡からミット、ブルペン捕手の柳(りゅう)からマスク、そして用松(もちまつ)からはレガースとプロテクターを借りた木村拓。人造人間さながら、まさしく巨人軍の捕手全員の想いを身に纏(まと)い、両軍のプレーヤー、そして数万のファンが見守るグラウンドにスクランブルで現れたのだ。

豊田(G)の投球練習、その1球目が木村拓のミットにおさまったとき、その日何度目になるだろうか、大きなどよめきが地響きのようにドームを揺るがした。「おおー、ちゃんと捕れる!」  1球、また1球と、どよめきはおさまらない。12回表、木村拓は、豊田、藤田野間口の三人の球を受け、ランナーを出しながらもヤクルトの攻撃を0点におさえてしのいだ。

大歓声! 野球というスポーツの難しさと面白さを愛する人々からの、惜しみない喝采(かっさい)! 誰もが、その場にいる者のみが共有する一体感に溺れた!

12回裏、木村拓に打順が回ると、凄まじい声援。三振に倒れ、ベンチに退くときにも、拍手が沸き起こった。その拍手の響きは、観戦した何万人かの脳裡(のうり)で、永遠に鳴り続けることだろう。

ヤクルトは21人、巨人はゴンザレスを除く24人の選手を使い切る総力戦、輝けるドローの一戦を、見た!



   1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
 S 0 0 1 1 0 0 1 0 0 0 0 0 3 10 0
 G 0 0 0 0 0 1 0 0 2 0 0 0 3 14

ヤクルトバッテリー  ユウキ 、松井 、李恵践 、松岡 、高木 、鎌田 、吉川  -  相川
 巨人バッテリー グライシンガー 、山口 、越智 、木村正 、クルーン 、豊田 、藤田 、野間口  -  鶴岡 、加藤 、木村拓

 本塁打  ヤクルト
 巨人 小笠原 28号(6回裏ソロ)


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