コサナエ
2002.5.25 神奈川県

溜池や流れの緩やかな用水路などに見られるサナエトンボ。本来普通種のはずだが、用水路のコンクリート化などの影響で生息地が減っているようで、地域によってはかなり稀となってしまった。
 
 私がトンボを見始めた頃、公園の池などの種類を一通り見た後、もう少し郊外でサナエトンボの仲間を探してみようと思い立ち、まず図鑑を見ながらどれがまず見られそうか推理してみた。その時まず候補の一つに上がったのがこのコサナエだった。図鑑には普通と書いてあるし、この名前のシンプルさからしても、これはまず近いうちにみられるだろうと思ったのだ。折を見て出かけるうち、最初に見たのはダビドサナエ、その次は確か川原で羽化中のミヤマサナエ、その次あたりに谷戸のヤマサナエ、次いで電線の上にオナガサナエ・・・ところがコサナエが一向に出て来ない。どうなっているのだろうと首をひねった。サナエの出現が天候や時間帯などをかなり選ぶので難しい面がある、ということや、環境による住み分けについてもはじめはあまりよく知らなかった。また一人で歩ける範囲もたかが知れている。しかしそれにしても普通種にしてはあまりにも見つからなすぎる気がしたのだ。その後情報不足からサナエ探しは行き詰まっていて、トンボ自体からも少し遠ざかりかけていた。

 ところが近年になってパソコンを始めて、コサナエは埼玉などでは地域によっては今なおかなり普通に生息しているらしいことがようやくわかった。しかし同時に、実はやはり神奈川県ではごく一部地域を除いてほとんど見られなくなってしまっていることも判った。そういえば今まで歩いた範囲には良質な溜池はあまりなく、溜池の数自体が少ない。また田んぼの用水路は既にコンクリート護岸と化したところが多く、素掘りのトロッとした用水路などというものにはなかなかお目にかかれない。これではラチがあかないということで、埼玉へ行こうか、とも思ったものの、やはりあえてここは神奈川にこだわってみよう、ということで、最近知ったどうにか生き残っているらしい地域へ、キイロサナエ探索と兼ねて出かけることにした。

 この日どうにか羽化中のキイロサナエ♀1頭を見つけて撮影してやれやれ、と思ったものの、そういえばコサナエがいないなあ、これはまたふられるのか・・・と思いながらともかく水路沿いを歩いてみる。足元から飛び立って「ん?」と思ったのはシオカラトンボ、やけにでかいのが出てきたと思ったら産卵に来たクロスジギンヤンマ、ひらひらと黒い影は早くも出てきたハグロトンボ・・・・水路沿いの道も終点に来てああまたダメだと思ったらなんと足元に小さいサナエがいた。ところが悲しいかなこれまでの癖が抜けず、思わず一瞬「ダビド?」と思ってしまった。それでもいやいやダビドの環境ではないはずだと、目をこすってもう一度よく見たらまさにコサナエ、成熟した♂だった。
 やはりコサナエはダビドサナエよりさらに淡色部が多く、淡い薄緑の体と青緑の複眼がなかなか美しい。初夏のミゾソバやイタドリの明るい緑、それにトロッとした水面に映る青空が似合うトンボだという印象を受けた。分類上はすこし違うグループになるが、源流部のクロサナエ、少し下流のダビドサナエ、に対してさらに下流の明るい用水路や溜池の生態系の中で似た位置付けを担っているのがこのコサナエなのかな?という感じがした。
 とりあえずある程度写真を撮り、さらにもう少し撮ろうと思っていたのだが、このコサナエは飛び立ってホバリングした後、ハグロトンボのすぐ横に止まった。そこでちょうどそのハグロトンボがいつものように翅をス−ッ、パタッとやった。するとなんとコサナエはそれにおどろいてあっさりといなくなってしまった。

  一度訪れたくらいではその場所の実態はなかなか掴めないが、♂1頭がやっととは、ここのコサナエも大丈夫だろうか?と心配になってしまう。しかし今回探してみて、コサナエの好む環境のイメージがよりはっきり解ってきた気がするので、他でも注意して見れば「実は細々と生き残っていた」という場所にも、もしかしたら今後出会えるかもしれない、という気も少しはしてきた。

▲トンボフォトギャラリー