ギンヤンマ
2002.6.28 神奈川県

 平地の開けた止水域に住む最も身近なヤンマで、ブールのような人工池や河川敷の小さな水溜りでも、しばしば少々の草本があるだけでも産卵に訪れる。しかし近年平地の沼地の減少や環境悪化により昔に比べればはるかに減少している。また、森に囲まれた小さな水域ではクロスジギンヤンマの方が優勢で、そういう場所では本種がほとんど見られないこともある。
 
 以前ヒヌマイトトンボを撮影したことのある場所に行ってみたが空振りだったので、もう一つの候補地??の川辺に偵察に来た。実はこの辺?にいるような話を何かで読んだような曖昧な記憶があるのだが、不覚にもそれが何だったかも忘れてしまったのだ。行ってみると確かにカニがうようよいる汽水の葦原があり、まあいてもいいのかなとは思うものの、なんだか葦原が狭くてそれほどいそうな気がしなかった。そもそも変に起伏もあってあまり入れないし、中はゴミも多くてもどうもあんまり気分が良くない。ヒヌマイトトンボは生息環境があまりに特殊なので、これを探しに行ってダメだった場合、他のトンボがほとんど何も見られない可能性も高く、従って行くのもなかなか勇気が要るのだが、しかし今回はこのギンヤンマがちょっとした拾い物だった。
 
 
 来なきゃ良かったかなあと思いながら川辺を歩いてると、目の前の草むらから突如羽音と共に大きなトンボが飛び立った。しまった!ギンヤンマが止まってたんじゃないか!!と思ったものの、目で追っているとガマ原の上を大きく旋回して戻ってきて、運良くまた先ほどの草むらに止まった。まだ割と若い♂で、曇っていて気温も低めなので、あまり活発に動いていないようだ。ところがそーっと近づいていく途中でなんと位置が判らなくなり、しばらく探してしまった。よくよく見たら思っていたより少し低い位置に静止していたのだが、それにしても明るい緑の草むらに見事なまでに溶け込んでいる。ちなみに樹木によく止まるクロスジギンヤンマはもう少し黒い部分が多く、暗い森の中を徘徊するヤブヤンマはさらに黒色部が多いのだから、やっぱりよくできているなあ、と改めて感心してしまう。実は私は今までどちらかというとクロスジギンヤンマの方が好きで、ギンヤンマはどうも胸に黒条も何もない配色がなんとなくシマリがない?ように感じていたのだが、こうして間近でじっくり見るとやっぱりさすがに美しかった。長年トンボに関わっている人でも、普通種ながらギンヤンマにはいまだ特別な思い入れを抱いていることも多いようなのだが、こうしてみるとそれもなんとなく頷ける気がしてきた。
 ところでギンヤンマは汽水域でも発生できるのだろうか?発生できないとなると、土手にわずかに水が滲み出してカヤツリグサが生えたような所があったので、そういった僅かな淡水域を利用しているのかもしれないし、もちろん他所の淡水池から飛来した可能性もある。
 

 ところで、東京都内には20年くらい前まではまだ草の生えた空き地が多く、本種が今より多かったのではないかと思うが、その後空き地が非常に少なくなり、また公園や街路樹などの木々が成長しているので、昔よりクロスジギンヤンマの方がが優勢になっているのではないかと思う。公園池でも比較的広いところでは今でもギンヤンマがよく見られるが、クロスジギンヤンマがいなくてギンヤンマだけがいるような、典型的な空き地の野っ原のようなところは本当に少なくなった。そういえば、昔東京の大井埠頭には広大な草原があり、通称「バンの池」と呼ばれる大きな水溜りがあった。ギンヤンマも普通に飛んでいた記憶があるのだが、あの当時本気でトンボを探していればもっと色々な種がいたのではないか?と思うと残念でならない。その後そこには市場が移転してきて、「バンの池」は跡形もなく消えてしまった。

♀産卵 2001.7.25