アオヤンマ
2002.6.3 千葉県

 アシの生い茂る初夏の沼地で見られる美しい緑色のヤンマ。日中活動するヤンマの仲間でも、開放水面を好むギンヤンマとは対照的に、込み入った葦原の間を縫うようにパトロールする姿が見られる。長年の沼地の干拓、埋め立て、或いは汚染の歴史と共に生息地を狭められ続けている。
 
 アオヤンマは私の住む神奈川県では残念ながら1980年代に絶滅したと言われている。かなり以前に茨城の沼まで出かけてようやく初めて見たのだが、葦の上を飛びまわるばかりで写真は撮れなかった。当時はそういうものだと諦めていたのだが、今回再度地図などから見当をつけた千葉県の溜池へ出かけてみることにした。
 まずは以前から目星をつけていた大きい溜池を覗いてみる。するとそこは嬉しいことに、ハス、ヒシ、ガマ、アシが生い茂り、神奈川ではほとんど見られないまさしく絵に描いたような「トンボのいそうな溜池」だった。ところが岸を歩いてみると信じられないくらいトンボが少ない。池の普通種を6、7種はどうにか確認したものの、池の面積と風景からすると驚くべき個体数の少なさで、本当に一見してスカスカなのだ。不審に思いながら池の奥へ行くと,大きな排水路から濁った水が轟々と流れ込んでいて、怪しい臭気が対岸までたちこめている。どうもこれが原因ではないかと思ったが、その上ここはバス釣りの穴場でもあるらしく、残念ながらこれではトンボにはダブルパンチではないかと思えた。原因は他にもあるのかもしれないが、まったく、トンボにとって好適な場所かどうかはぱっと見の風景だけでは判らないものだ、とつくづく思った。
 アオヤンマはしばらく探してようやく♂1頭が飛んでいるのを確認できたが、なんとなくこれもほんとにここで発生した個体なのか、怪しい気もしてきた。それにちょっとアオヤンマには葦原部分の面積が小さいかもしれない。そんなわけで息消沈しつつとりあえず昼飯のパンをかじりながら、そういえば地図上に少し離れてずっと小さい池があったのを思い出した。あまり期待できそうな気はしなかったが、午後は一応そちらを覗いてみることにした。

 しばらく歩いてその池のあたりに来たが、池らしきものが見えない。しかしなにやら葦原がある。どうせよくある「元休耕田」の乾いた葦原だろう・・・と思ってよく見たらそれがその池だった。ん?ということはもしや・・・と思うまもなく葦原の上を薄緑の影が横切った。アオヤンマだ。しかも1頭が旋回するとそれに反応した個体が下から時々飛び出てくる。狭い割に結構個体数がいるようだ。

 しばらくすると♀らしき個体が急降下してきてあっという間に♂につかまり数メートル先の葦の中に止まった。しかし葦が深くてよく見えず、どうしようかと思っているうちにすぐにバラけて飛び立ってしまった。次に1頭の♂が大きな獲物を抱えて飛んで来たのでこれは・・・と思ったら案の定葦に止まってくれた。葦の隙間からどうにか見えるという位置で、風で激しく揺れるので難しかったが、久々のデジスコの活躍でどうにか撮影できた。

 その後は全く止まってくれなかったが、しばらく見ていたらなんとなく♂の行動パターンが少し読めてきた。これは撮れるかも?というわけで、例によって飛翔撮影に切り替えた。飛翔撮影は撮り損じが多いので、午前中場所探しに手間取った分、あとは時間との戦いになった。しかし夕方まで粘ってそこそこ満足のいくのカットがいくつか撮影できた。

 それにしても生息地がまだ比較的残っている千葉県でも、本種をとりまく状況はそんなにいいようにも思えない。将来神奈川の二の舞とならぬことを願うばかりだ。

  

 
 

 
 

▼2002.7.19 交尾