コスズガモ♂の識別

コスズガモ♂はキンクロハジロ♂とは背の色の違いで容易に識別できるが、スズガモ♂、スズガモとキンクロハジロ
の交雑個体、キンクロハジロとホシハジロの交雑個体との識別には注意を要する。
*スズガモ♂との識別

図1)コスズガモ                                             図2)スズガモ

*頭部の形態スズガモ図2は額が出っ張り、後頭は丸い。それに対しコスズガモ図1は頭頂が高くせり上がり、
後頭がやや冠羽状に尖る。これがこの2種の典型的な頭部の形態といえる。だがこの頭部の形態は若干の個体差
があり、またその時の状況によっても変化する。


図3)コスズガモ                   図4)左の個体と同一個体                  図5)スズガモ、図2と同一個体

図3の個体は図1の個体と同時期に見られた個体だが、図1の個体に比べると頭頂のせり上がりはやや少ない。
これは個体差といえる。図3図4は同一個体だが、頭の形が全然違って見える。このように頭の形は状況によっても
著しく変化する。図4では頭が丸みを帯びスズガモに似て見える。
                  

図6)コスズガモ この2羽のコスズガモは頭の形が丸くなっている。図5のスズガモと一見よく似ている

図1図2を比較してわかるように、スズガモのほうが分厚い(特に付け根部)。

頭部の色(光沢)コスズガモの識別においてしばしば見られる過ちに頭の光沢がある。コスズガモは
紫光沢、スズガモは緑光沢とされ、確かに図鑑などの図版もコスズガモは紫色に描いてあり(wildfowlの
図版はなぜか緑光沢に描いてあるが)解説文にも紫光沢と書かれている。基本的には紫光沢といえるが、
実際野外で見ると光線の条件による違いで緑光沢が見られることは稀ではないし、むしろ普通である。
(北米の親切な図鑑には、緑光沢が見られることも・・・という記述がある)。緑光沢が見られるからと
いう理由で雑種、あるいはスズガモと決め付けるのは間違いである。同じ紫光沢とされるキンクロハジロを
少し詳しく観察した方は気付かれていると思うが、ある光線の条件のもとではキンクロハジロの雄の群れす
べてが緑光沢に見える時がある。逆に緑光沢とされるスズガモもある条件下では紫光沢になる。検索エンジ
ンで「Lesser Scaup コスズガモ」を検索すれば北米で撮影された緑光沢のコスズガモの写真が何枚も見られる。
一例としてアメリカ、ニューヨークのAngus Wilson 氏のOcean Wanderers comの写真を紹介する。8、10、11枚目
の写真のコスズガモ♂は強い緑光沢が見られる。
この写真の♂も緑光沢が出ている⇒http://www.petalumawetlandspark.org/HTML/lesserscaup.html                                              
                                                ⇒http://www.greenbackedheron.com/photo.cfm?photoid=515

井の頭自然文化園で飼育していたコスズガモ♂ この個体も光線の角度により頭全体に緑光沢が現れる


図7)緑光沢のあるコスズガモ   図8)緑光沢のあるキンクロハジロ  図9)紫光沢のあるスズガモ

以前(1999年)北浦で観察されたコスズガモ♂が当時、後に観察した人達によって雑種ではないかと言われてい
たということを最近知った。どうやら頭に緑光沢があるという理由だったらしい。本当に当該の個体を観察された
のかどうか確かではないが、もし同一個体を観察されてそういう意見が出されたのであれば、それは間違ってい
ると思う。コスズガモの頭の光沢は紫光沢のみとの思い込みからそういう意見になったのではないかと思う。

嘴爪の黒斑スズガモは黒斑が幅広く、特に嘴の先端部で広くなっているのに対し、コスズガモは幅が狭く、
黒斑は嘴爪部に限られる。この黒斑の大きさは個体差は若干あるものの、両種の識別に有効で、重要な識別点とい
える。図12の角度ではコスズガモも黒斑の先端が広がっているように見えるので要注意。また嘴を水平に保って
いる場合、正面から見ると嘴の黒色が多く見えることがある。


図10)コスズガモ         図11)スズガモ         図12)コスズガモ                   図13)スズガモ

*背の波状横斑ーコスズガモのほうが目が粗く太い。このため遠目には背がスズガモより暗色に見える。
これも両種とも若干の個体差があり、コスズガモの目が細かい個体とスズガモの目が粗い個体とはその差が
やや少なくなる。

図14)コスズガモの背                         図15)スズガモの背

遠目にコスズガモの脇はややバフ色がかって見え、一方スズガモは純白に見える。これはコスズガモの
脇には、背よりはかなり淡いが波状横斑があり、スズガモではこの横斑が非常に淡く、あまり目立たないことか
らきている。また、この横斑は日本に渡来する10、11月頃は両種とも濃く、明瞭で目立つ


図16)コスズガモの脇                         図17)スズガモの脇

翼上面のパターン嘴爪の黒斑と共に重要な識別点となるのが翼上面のパターンの違いで、
コスズガモは次列風切のみが白いのに対し、スズガモは内側初列風切にも白い部分がある。コスズガモは白い
次列風切と黒褐色の初列風切が明確に分かれて見えるのが特徴だが、図20のように光線の強い時は、そのパタ
ーンが不明瞭に見えることもある。


図18)コスズガモ                    図19)スズガモ

図20)コスズガモ

*大きさコスズガモはスズガモより一回り小さく、ほぼキンクロハジロと同大か、または少し小さく見え
ることもある。

図21)コスズガモ(右)と2羽のスズガモ。コスズガモが一回り小さく、水に浮いているとき、特に胴体が短く感じる
 

雑種との識別
Aythya属のカモではしばしば種間の交雑が起こり、その組み合わせによってはコスズガモに似た交雑個体が
生ずることがある。その組み合わせとしてはキンクロハジロxスズガモ、キンクロハジロxホシハジロなどがある。
コスズガモに似ているといっても雑種には必ず雑種としての特徴が現れるので、ある程度の条件で観察できれば
識別はそれほど難しくはない。
キンクロハジロxスズガモ
下のコスズガモとは次の点で異なる。
●頭の冠羽が長く突き出ている。
●背が暗色で波状横斑が細かい。
●嘴先端の黒斑が大きい
●脇が純白
●キンクロハジロよりやや大きい。
 
 
 
 
 
 
 

コスズガモ
●嘴先端の黒斑が細い。
●雑種ほど冠羽が目立たない。
●背は白地に、明瞭な波状横斑がある。
●脇は純白ではない。
●翼上面の白帯は次列風切のみ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

キンクロハジロxホシハジロ
上のコスズガモとは次の点で異なる
●嘴先端の黒斑が横に幅広い。
●頭の紫光沢は赤みを帯びる。
●眼がやや赤みを帯びることが多い。
●背が灰色で波状横斑が目立たない。

 

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