かなり限られた地域でしか見られない希少なイトトンボ。模様などはセスジイトトンボによく似るが、この類のイトトンボ(クロイトトンボ属)の中では特大で、通常この大きさだけでもそれと判る。
この日はトラフトンボを見に出かけたが、もしかして出始めのオオセスジイトトンボが見られるかもしれないという期待もあった。朝は曇っていてトラフは飛びそうになかったので、菱の生えた沼の岸の、釣人がつけた草の中の細い道に分け入ってみると沢山のイトトンボ類が次々と飛び出してきた。定番のアジア、アオモン、クロ、それにムスジが次々に出てくるが、これといって大きいものはなかなか出てこない。時折アジアとアオモンが同時に飛び出したときなど、アオモンのほうが大きいため、一瞬、「ん?」と思わせられるが、やはりよく見ればたいした大きさではない。さすがに少し時期が早かったかと思いながらもさらにあちこちの小道を歩いていると、ついにずば抜けて大きいイトトンボが飛び出した。よく見るとセスジ風の模様で、地色はすっきりしたきれいな緑色、一見してオオセスジイトトンボだった。図鑑などでその大きさは知識としては知っていたが、やはりこうして現場で見るとその違いが改めてよく判った。しかし特に♀は模様がセスジそっくりなため、どうも写真ではその雰囲気が伝えにくいトンボだ。その後もさらに探すと結局4・5個体を確認できた。


図鑑によると本種の分布は利根川と信濃川下流のデルタ地帯、それに青森、秋田、宮城となっていて、オオモノサシトンボも似た分布を示す。なんだかどこかで聞いたような分布だと思ったら、これは低地の湿原で繁殖する鳥類、オオセッカやコジュリンの分布にそっくりだ(ーこれらは信濃川流域では繁殖していないようだが)。こういった低地の水郷地帯には、鳥にもトンボにもやはりそれ相応の独特の種が暮らしているあたり、なかなか興味深い。![]()
▲♂♂は成熟すると美しい水色になるのだが、さすがに時期が早いので全て緑色の未熟個体だった。しかし♂♀、未熟、成熟いずれもセスジイトトンボより比較的色むらが少なく、より一様に純粋な青や緑である傾向があるようだ。そのためか近くでじっと見ていたら、まるでアオヤンマのミニチュア版のように見えてきた。♂の腹部上面の黒はセスジ、ムスジなどと異なり先端部までつながっている。また腹端の上付属器は長く、肉眼でもはっきり突き出して見える。