春季の「脚の黄色い大型カモメ」について M.Ujihara 2004年7月


<<2004年4月3日 酒匂川

4月頃、脚が黄色く、嘴に黒斑があり、頭も割と白っぽい大型カモメが話題になることがある。これらはbarbensisやmongolicusの脚の黄色い個体にもよく似ていて、特にかなり頭の白い個体の場合、その可能性は否定はできない。しかし4月以降となるとさすがに少々の頭の白さは夏羽への移行によるものかもしれないし、やはりホイグリン系個体の可能性をかなり考える必要があって、特に春季にはbarabensisやmongolicusという結論に至るのは多くの場合なかなか難しいというのが実感だ。

とりあえず、秋〜冬に日本で見ている範囲では、「脚の黄色い個体=初列風切の換羽が遅い」という傾向はかなり徹底している。大きめでがっしりした個体、ほっそりした個体など個体差も大きいが、そのいずれにも言える傾向だ。日本ではそのような個体はかなりの数が渡来しており、ある程度まとまった数のセグロカモメの群れがいれば見つけるのはそれほど難しくない。そしてしかし、中東のbarabensisのように2〜3月にして頭が純白というものは今のところ見た記憶がない。したがって日本で見られる足の黄色い個体の少なくとも大半はやはりホイグリン系個体と思われる。また、それらは秋より晩冬〜春先に嘴に黒斑が出る傾向がある?ようにも感じている。加えて、中東のホイグリンカモメの画像を見ても解るのだが、ホイグリン系はmongolicus同様に、初列風切の黒はvegaeより多い傾向があり、7枚の個体がかなり多くて8枚の個体も見られるので、この点も特にポイントにならないと思う。

秋〜冬に「脚が黄色くて初列風切の換羽が早い」という個体がいればそれが「脚の黄色いmongolicus」の可能性は高いかと思うし、そういうものが頻繁に観察されれば春のものについてもその可能性を高めに考えてもいいように思うのだが、今のところ明らかにそれと思える個体は確認していない。


初列風切の換羽の完了時期 

あくまで個人的な経験・感触による全く大雑把なものなので当然誤差はあると思うが、だいたいの関係性としてはこのようになる。互いにオーバーラップはあるが、mongolicusとホイグリン系ではかなり開きがあることに注意。


mongolicusの脚の色に関してはPhenotypic variation and taxonomy of Mongolian Gull, Pierre Yesou 2001, Dutch birding 23 から要約しておいた。(訳はそう間違っていないつもり?だが、あくまで個人的なメモ程度のつもりなのであまり当てしないように。気になる方は可能なら原典にあたってもらいたい。)これによると本当に真っ黄色い個体はごく少数のようだが、それ以外はかなり曖昧な色?のような書き方で、やや読んだだけではイメージしにくいところもある。

またMartin Reid's Websiteで紹介されているバイカル湖での観察例だと、「脚は大部分ピンクもしくは灰色っぽく、黄色の個体は見かけなかった」旨のコメントが紹介されている。またこれまで見た韓国の越冬個体の画像(換羽が早いこと、初列風切の黒が多い傾向、頭の斑の少なさなどからmongolicusと判断できる)も基本的には脚はピンクである。

※なお、これまでも再三書いているが、図鑑類等でしばしば脚の黄色い個体を「キアシセグロカモメ・mongolicus」として掲載しているものは、元をたどれば80年代に香港辺りでホイグリンカモメ(系)がmongolicusと混同されていた頃の判断基準(換羽時期等は考慮されていない)を後々まで引きずった結果と思う。ちなみに拙著1992年の「カモメ識別ガイド」もこの判断基準に拠ったものである。色々混乱する場合があるかとは思うが、こういった時代的な流れは是非とも背景として踏まえた上でこの仲間の識別を考えるようにして欲しい。



▼2002年4月の‘ホイグリン系’個体


2002年4月1日 酒匂川
頭にはまだかなり斑がある。vegaeの多くよりやや細身で、嘴は細く赤斑は大きい。上面の灰色はvegae程度。このような個体は日本ではかなり普通に見つけることができるが、秋〜冬に観察すると初列風切の換羽が遅い傾向がかなりはっきりしている。


2002年4月13日 酒匂川
これも上の個体とだいたい似ているが嘴に大きな黒斑がある。


2002年4月8日 酒匂川
大柄な個体で嘴に黒斑がある。画像では見にくいが顔にはまだかなり斑がある。


2002年4月13日 酒匂川
頭はかなり白い方なのでmongolicus?といえばそのようにも見えるが、4月13日ということも考えるとやはりホイグリン系でもおかしくないかと思う。額や目の周囲にも少し斑がある。



mongolicus 2002年4月13日 酒匂川

脚はピンク。頭は頸側あたりに一片斑の名残らしきものがある以外は完全に真っ白。嘴に黒斑。初列風切の黒はP10‐P4までの7枚。なお、個人的にはこのように脚のピンクの個体で特徴がよく揃っていて特に問題点のないものはmongolicusと判断していることも多いが、これも五月蝿いことを言えば特に春季の識別は簡単ではないし、こういった個体についても常に何がなんでも100%間違いないと保障するものでもない。左はホイグリン系個体で、この個体は嘴の赤斑が巨大で上嘴に及んでいる。mongolicusはこのようにはならないと言われる。