最新・カモメ情報 2013.3.11 銚子  M.Ujihara

クロワカモメ Larus delawarensis


今年で12冬目の渡来となった。肩羽が乱れて白い三日月斑(scapular crescent)が通常より大きく露出している。





クロワカモメ Larus delawarensis (中央)とセグロカモメ・カモメ・ウミネコ
この個体の背中の濃さはセグロカモメ(vegae)とほぼ同等。相手のセグロが濃いめの個体だとそれより少し淡く感じることもあるが、それでもあまり大きな差ではない。カモメ(kamtschatschensis)は平均するとセグロカモメより若干濃い傾向があるので、カモメの群の中では淡さが目立つこともあるが、それでもカモメの淡い個体とはほぼオーバーラップし、並ぶ個体によってはカモメと全く同じに見えることもある。

いずれにしてもセグロカモメや淡めのカモメと同等ということは、すなわち概ねウミネコとユリカモメの中間であることを意味する。よく従来の図鑑の記述等からは、クロワカモメの背中の色はかなり淡く、ユリカモメに近いというイメージが持たれる。しかし欧米で撮られた画像を多数参照すると、確かにユリカモメと同等に見える例もある一方で、実際にはユリカモメより濃いものが意外に多い。例えばこちらのイギリスで撮られたクロワカモメを見ると、周囲のユリカモメに比べて明らかに濃く、通常見慣れたユリカモメとセグロカモメのトーンの差と同じくらいの差があるように見える。こちらのアメリカで撮られたものも同様。こうした例は決してレアケースというわけではなく、サイトがなくなったりして紹介できないものも含めて過去にも似たような画像は度々見かけている。


参考:セグロカモメ Larus vegae とユリカモメChroicocephalus ridibundus  2013.3.15 皇居
セグロカモメとユリカモメを、極力条件をそろえて順光・真横で撮影してみた。両種の背中のトーンの差は諸条件で開いたり縮んだりするが、いずれにしろ上で紹介したリンク先のユリカモメとクロワカモメの差となんら違わないように見える。従ってこのことからも、クロワカモメの背中の色は濃いめの個体ではセグロカモメと同等に見えるのは普通のことではないかと考えられる。


参考:セグロカモメ Larus vegae とユリカモメChroicocephalus ridibundus  2013.3.15  皇居 
他の画像はこちら


背中のグレーの濃さのイメージ図(試作)
これまでの国内外(北米も含む)での観察経験、及びネット上の多数の画像、Olsen図鑑の数値も参考にして、背中の濃さをコダックグレースケールを用いて図示してみた。各種の個体差の幅等は微調整の余地はあると思うが、大よその関係性を見て頂きたい。四角で示した部分がクロワ・セグロ・カモメの3種間に想定しているオーバーラップゾーンで、銚子個体はこの辺りに位置すると考えている。なおOlsen図鑑ではユリカモメが4-5(6)、クロワカモメが3-4(5)と、クロワカモメが随分と淡い数値になっているが、上に挙げたリンク先のような実際に両種が並んだ画像を見ると、この数字はどうもあまり実態に合致せず、むしろ逆の方が実態に近い印象を強く受ける。またOlsen図鑑ではユリカモメの東シベリアの亜種sibiricusは、基亜種ridibundus より背中が概して淡色との記述もある。ユリカモメには亜種を認めない場合も多いので、これはごくわずかな差でしかないかもしれないが、もしこの記述の通りだとすると、欧米よりも日本ではクロワが相対的により濃く見える可能性もある。なおクロワカモメとヨーロッパのカモメの基亜種canus(Olsen図鑑では5-6(7))との比較ではこちら も興味深い。


参考文献:Olsen, K. M. & Larsson, H. 2004 Gulls of North America, Europe, and Asia. Christopher Helm, London.