4つの画像は全てセグロカモメ(vegae)、

しかも

全て同一個体!

である。



足元や背景の水の流れを見ても同じ場所だとわかると思うが、何しろ目の前で羽繕いをしているのを連続して撮ったのだから、無論同一個体でしかありえない。つまり、この肩羽後部の白い三日月斑の違いというのは、
単に周囲の羽の重なり具合や見る角度のせいで一見全く違って見えているだけなのだ。ある意味鳥という生き物は「羽毛の束」なのであって、それによって色や模様が構成されている。したがってその羽毛の重なりが少し変わっただけでも見かけ上の色模様は様々に変化して見える。要するに、「白い三日月斑」といっても、デコイにペイントしてあるような固定的なものとは根本的に違うということだ。

一枚の写真からこの三日月斑が大きいからどう、小さいからどうと言うことがいかに無意味かが、これでよく解るだろう。しかしこういうことは普段から野外でカモメを見慣れている人なら通常経験的に知っているはずだと思うし、少し画像を収集するなりして眺めるだけでもわかると思う。また文献の記述等にしても、こういった羽毛の重なりや見え方の違いをどこまで考慮して書かれたものなのか、私は非常に疑問に思っている。

もっとも、例えば中型カモメの場合は、この三日月斑はカモメでは比較的目立ち、ウミネコやクロワカモメでは目立たない傾向があるとは思うので、全てのケースにおいて一切何の参考にもならないというわけではない。しかしこれら中型カモメにおいてさえ、現実には個体や状況により見え方は様々であり、実はそうそう一概にも言えないのだ。

まして、識別に関してよく話題になるセグロカモメに近縁な各種/亜種においては、この三日月斑が何か識別に役立ちそうだと感じたことは私はとりあえずないといっていい。もしかして実は亜種ごとに多少の傾向がある?という可能性も絶対にないとは言わないが、もしそうだとしても上の画像のような現象を経験的に知っていれば、そうそうこの点を単純にどうこう言うことはできないはずだ。ともかく、生身の鳥が実際野外でどういう状況の時にどう見えるのか、写真にどう写るのか、といった基本的なところを、机上の知識としてではなく、実際の野外経験を通して理解することがまずは欠かせない。それなしにただ何かで読んだ記述を当てはめようとすると、どんどんおかしな話になってしまう危険性があると思う。