命がけの鬼ごっこ
「い、いつまで追ってくるんだよっ! 奴の体力は底無しなのか!?」
「底はあるんだろうが、歩幅が違いすぎる!」
祐一と北川は逃げていた。ただただひたすらに。
時々木の間に入りこんでドラゴンの視界から逃げようとしたが、
看板だろうが木だろうが、若干スピードが落ちる程度でほとんどお構いなしになぎ倒して突進してくる敵にはあまり意味が無い。
「畜生! なんとかできないのかよ!」
祐一が叫ぶ。
「せめて、武器みたいな物が無いと……!」
「武器!? そんなもんどこにあるんだ。ナイフ程度の刃物じゃ鱗に弾かれるだけだと思うぜ」
「ある程度の射程も欲しいしな」
長射程で攻撃力の高い武器なんて、一般市民が持ってるわけがない。
どうにかして、周りの物、手持ちの物でこの局面を切り抜けられないのだろうか……
逃げ道を選ぶのは北川に任せ、祐一は彼の背中を追いかけながら必死に思考をめぐらせた。
同時にポケットの中も調べて見る。
中にあって武器になりそうなものは、せいぜいライターくらいのもの。
こんな物じゃ、小動物だって倒せやしない。
「いっそ火事でも起こしてみようか」
「んな事したら俺達まで焼け死ぬぞ」
木陰に潜んでは、隠れている場所周辺の木をなぎ倒されてまた走る。
1回の休憩で休める時間は1分と無かった。
「ん、火をつける? ライターが意外と使えるかもな」
「おい、まさか本当にやる気かよ」
「死ぬ気なんて少しもないさ。あとはあの分厚い鱗の鎧に負けないくらいの武器を探すだけだ!」
「探すったって、逃げるのに必死でそんな余裕はないぞ。それに、そんなものが都合よく落ちているわけが……」
「よし、OK! 北川! 少し時間稼ぎしてから来た道戻ってくれ!」
「な、おい! 時間稼ぎってなんだよ!」
「じゃ、後は頼んだぜ! 北川!!」
そう言うと祐一は一人森の中へと飛び込んで行った。
「に、逃げやがったな、この野郎!」
北川が何やら叫んでいるようだったが、今は気にしていられない。文句なら後でゆっくり聞こう。
「よし!」
祐一は気合を入れると、そのまま来た道を戻って行った。
「相沢、どこだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
あれからどれくらい時間が経っただろうか。遠くから北川の叫び声が聞こえてきた。
「なんだかんだ言って、ちゃんと戻ってきてくれたか」
それからさらにしばらく待ち、祐一は道の上に出ると、北川に何かを投げ渡した。
「それを持ったままここへ飛びこめ、北川ああぁぁっ!」
祐一はそう叫ぶと、今度はドラゴンに背を向けて走り出す。
北川は言われた通り、祐一の居た方向に飛びこむ。
ビィィィィィィンッ!
北川の持っていた物――ツタを編んで作られた縄を引っ張る形になった。
飛びこんだ近くの木に、縄の反対側の端が結び付けられている。
どうやら、道を挟んで反対側の木の裏に1回縄を通しているようだ。
そして、道の真上、地面から少し浮いたところに縄がピンと張り詰められた。
手元にある縄の切り口を見ると、どうやらライターはツタを切るのに使われたらしい。
目の前を走る祐一を追いかける事だけに木をとられたドラゴンは、足元に張られた単純な罠にあっけなく引っかかってしまった。
大きな音を立てて、勢いよくすっころぶドラゴン。
「よし、上手くいったな!」
祐一はそう言うと、道の脇に置かれた棒を手に取った。
ドラゴンに倒されて地面からすっぽ抜け千切れてしまった看板の足である。
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁっ!」
祐一は棒を前に突き出し、何が起こったのかまだ理解していないドラゴンに向かって駆け出した。
「鱗は無理でも、ここならさっ!」
ドラゴンの鼻に足をかけ、そのまま目玉に向かって棒を突き刺した。
ズブズブと、変なゼリーを撒き散らしながら棒が潜っていく。
ドラゴンは物凄い雄叫びを上げ、祐一を振り落とし立ちあがろうとする。
しかし、ある程度まで体を起こしたところで、急に姿勢を崩した。
北川がドラゴンの足と近くの木にそれぞれ1回縄を巻き付け、そして全体重をかけて引っ張っていたのだ。
「ナイス北川!」
ドラゴンはそのままバランスを崩し続け、そのまま頭を強く地面に打ち付けた。
めきぃっという嫌な音が聞こえ、ドラゴンは動かなくなった。
目に刺さっていた棒を地面に思い切り叩き付け、その衝撃と頭の重さで棒は頭蓋骨を破って脳に達してしまったようだ。
「た、倒した……」
ドラゴンの亡骸を見つめながら、二人はしばらく呆然としていた。
「ところでさあ、相沢」
「なんだ、北川」
「もしも俺がドラゴンの足に縄を引っ掛けてなかったり、ドラゴンが逆側に倒れてたりしてたらお前はどうするつもりだったんだ?」
「どうするもなにも、目にアレを突き刺すところまでしか考えてなかったぞ、俺は」
「は?」
「まぁあれだ。結果オーライって奴だな」
北川の拳が祐一の顔面にめり込んだ。
【祐一・北川 ドラゴン撃破】
【現在竜の巣出口まであと数km地点(以前より最低1kmは出口に近付いてるはず)】
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