二流の条件


「どうやら、我々は誘導されているようだな」
いつ襲われるかと気が気でない南をよそに、さらりととんでもない事を言ってのける。
「そうなんですか?」
「うむ、彼女が言う通り奴らには我々を襲う気はないようだ。
 ならばこうして車を囲んで走る理由など他にはあるまい。
 ・・・あの超先生とか言う男、学者としてはともかく作家としては二流のようだな」
彼女・・・とは川澄舞の事である。

大志達の乗ったジープは今、小型恐竜の群に取囲まれたまま疾走していた。
初めは機会を窺っていると思われたがいつまで経っても襲ってくる気配はなく、
そのうち舞が
「・・・大丈夫。殺気がないから」
と言い出したのである。

「??・・・どうして恐竜が私達を誘導すると、超先生さんが二流作家になるんですか?」
「ふむ、もし、これが現実ではなく二流のマンガの中だったとしたら、
 我々が誘導された先には何があると思うかね?」
「え〜〜〜〜っと、恐竜さんの巣・・・じゃないですよね?
 あははっ、やっぱり分らないです」
「・・・・・・わからない」
「えっと、多分・・・
 ・・・『作者が一番見せたいモノ』・・・じゃないかしら?」
その回答に、大志は満足そうに頷いた。
「うむ、その通り。
 筆を取った本人は気づいていないかもしれないが、この誘導はあまりに強引で現実味に欠ける。
 自慢のネタを見せたいがために、せっかく構築した世界観を崩してしまうのは
 二流作家や素人が最も犯しやすい失敗のひとつだ・・・
 ・・・ここまでの舞台を演出する技量を持ちながら”それ”を犯すと言うのは
 奴が二流であると言う証拠に他ならん」

「・・・・・・・・・」
感心して聞き入る舞と佐祐理に気を良くしたのか、大志の演説はヒートアップする。

「・・・先のワイバーンにしてもそうだ!
 奴らにしてみればこの島は餌となる獣の宝庫だと言うのに、
 わざわざ「―」リスクの大きいジープを狙ってきた!
 ・・・この分では、元来「―!」大人しい魔物が無差別に人を襲ったり、
 要所要所に「――君!!」番兵を配置したりしているであろう事も容易に想像がつく!!
 これでリアリティを語ろうなどとは「大志君っ!!」・・・
 ・・・・・・何かね?丁度盛りあがってきた所なのだが・・・」
助手席に立ちあがり、背もたれに足をかけて両手をキメながら南の方へ振向きつつ問う。
「大志君!前!」
「・・・前?」
「トンネル!!」
「とんね・・・・・・
 ・・・・・・なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
慌てるが、遅い。
――ゴキャッ!!
「ごはぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


「・・・ふっ・・・
 我輩とした事が、演説に熱くなって周りが見えなくなるとはな・・・」
助手席と運転席の間に無様に沈みながらも、
眼鏡レンズの間のフレームを人差指で「つぃっ」とキメる大志は最高にかっこよかった。



【大志・南・舞・佐祐理 ジープで洞窟に突入】




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