まるで白い天使のような
澪は泣いていた。
子ドラゴンは死にそうで、仲間には置いていかれ。
どうしようもない恐怖と孤独の前になすすべも無く泣いていた。
いつまでもここで泣いていたってしょうがない事はわかっている。
久瀬の言っていた事だって、本当は理解できていた。
でも……
(傷だらけのこの子を、こんな場所に一人で置いてはいけないの……)
自分には何も出来ない。
ドラゴンのそばに自分がいたところで、何の意味も無い事はわかっている。
だから、泣く事しかできなかった。
「どうしたんですか……?」
背後から聞こえた音に、澪は慌てて振り返った。
「あ、びっくりさせてしまいましたか?」
背後に立っていたのは、真っ白なワンピースを着たとても綺麗な少女だった。
誰だかはわからない。
悪人ではなさそうだけど、近くにドラゴンがいるとわかればきっとまた久瀬のように自分を置いてどこかへ行ってしまうだろう。
それがとても怖いから、澪は自分の背中と荷物でそっとドラゴンを隠した。
「はじめまして。私はきよみって言います」
優しい微笑み。
さっきまでとは違う意味で涙が溢れてくる。
「あ、ごめんなさい」
『大丈夫なの』
涙をぬぐう。
『上月 澪って言うの』
「こ…うづき、みおちゃん?」
『はいなの』
「よろしくお願いします」
『よろしくなの』
二人揃ってぺこんと頭を下げる。
顔を上げてすぐ、きよみはしばらく考えこみ、口を開いた。
「あの、もしかして言葉を喋れないんですか?」
澪が上下に顔を振る。
「そうなんだ」
(うんっ!)と、澪はもう一度大きく首を上下に振った。
その拍子に、横に置かれていた荷物が倒れてしまう。
「あ」
慌てて荷物を直し、笑顔を取り繕うが時すでに遅し。
荷物の後にあったモノは、しっかりときよみの目に写っていた。
『なんでもないの』
澪が首をブンブンと横に振り、走り書きのスケッチブックをきよみにつきつける。
その勢いで、また荷物が倒れた。
このままじゃ、また置いて行かれてしまう。
せっかく一人じゃなくなったのに……
さっきまでの寂しさを思い出してしまい、涙が込み上げてくる。
「大丈夫。大丈夫ですから、少し見せて下さいね」
ドラゴンときよみを交互に見ながら必死に涙を堪えている澪を軽く抱きしめながら、
きよみはゆっくりと子ドラゴンを覗きこんだ。
「大変。血が出ていますね……」
眠っているように見えるが、状況はかなり酷いようだった。
このまま目が覚めなくてもおかしくはないのかもしれない。
どうしたものかとしばし考えていると、澪の荷物の中にある物を見つけた。
「あ、地図……」
その地図を抜きとって、ゆっくりと地面に広げていく。
「今いる場所、わかりますか?」
(ここなの)
澪がゆっくりと指で現在位置付近を指し示す。
武器博物館からしばらく歩いた場所だった。
現在位置からできるだけ近くにある、役に立ちそうな施設は……
しばらくして、地図を見つめるきよみの視線がある一点で止まった。
「医務室……」
この騒ぎで、テーマパークのスタッフはもう避難しているかもしれない。
でも、医務室なら人はいなくても薬だけは置いているだろう。
「澪ちゃん。この子、助かるかもしれませんよ」
きよみは微笑みながら、強く澪を抱きしめた。
真っ白なワンピース。そしてそれに負けないくらいに白い髪。
澪には、彼女が自分達を助けに来てくれた天使のように見えた。
【澪with傷ついた子ドラゴン・白きよみ 合流】
【地図から現在位置の近くに医務室がある事を発見】
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