再会〜よみがえる記憶〜
「で、まだかよ、武器博物館とやらはよぉ」
ぼやき声が聞こえる。
「さっき案内板があったんだからもう直ぐだよ、きっと」
「しかし、ヒロくんは相変わらずだねー、あの時も」
「なんだよ、あの時って」
「あの時だよっ、ほら・・・花火大会の」
そんな他愛も無い会話だったが、聞きつけた方にとってはまさに天の声にも等しかった、とは大袈裟だろうか。
「ちょっと、今の聞いた? エリア、サラ」
”ヒロくん”探して三千里、少し歩きつかれた顔のティリアが同行の二人に呼びかけた。
「ん、ああ聞こえたよ」
「どうやら直ぐ近くにいるみたいですね」
「そうとわかれば! おーい」
早速、呼びかけを始めるティリア、エリアもそれに続いた。
「浩之さーんどこですかーー」
「ん、なんだ今のオレを呼ぶ声は」
「誰か女の子が浩之ちゃんを呼んでるみたいだね」
なんだも何もそのまんまじゃないか、と祐介が心の中で突っ込み、いつものようにあかりが律儀に応える。
「ふ、オレもすっかり人気者だな」
何故か自慢げになる浩之、しかし。
「あ、でも、女の子と見せかけて、実はモンスターかもしれないよ、浩之ちゃん」
何故か沙織があかりの声真似をして茶化す、それを聞いた浩之曰く。
「おお、そうか、なら・・・おーいオレはこっちじゃ無いぞー」
「ひ、浩之ちゃん・・・」
「んだよ、あかり」
「ううん、なんでもない」
まったく、すっかり夫婦漫才だ、そう祐介が再び心の中で突っ込みを入れると同時に、
何ふざけてんだか、とにかく今からそっち行くから待ってなさいよ、と、どこからかの声が帰ってきた。
「OK、OK、じゃ、三秒だけ待つな、3,2・・・」
「ばぁ」
「どわっ!」
イキナリ目の前に現れた赤毛の一本お下げの少女に驚きのけぞる浩之だった。
「ち、ちきしょう! 卑怯だぞ!まるで遠くにいるみたいな口ぶりで騙しやがって」
「遠かったら、あなた達の話し声が聞こえるわけ無いじゃ無い、まったく」
ブツブツという赤毛の少女、それを押しのけてその後ろの小柄な金髪少女が前に出る。
まるで、90年代のファンタジーマンガに出てくる魔道師のような格好だった。
「とにかく、おひさしぶりです、皆さん」
「ほんと久しぶりだよね、ティリアさん、エリアさん」
沙織が笑顔で応えた。
「なに、こいつ等はお前らの知り合いなのか?」
祐介に尋ねるが、祐介も知らない、といった顔を返してきた。
「ほんっとーに、ティリアたちの事思い出せないの? ちょっと、これでも見て思い出しなさいよ」
といって沙織に突き出された、写真を浩之が見ると、其処には自分や祐介、よく知った仲間よく知らない人たちが映っていた。
・・・知らない、いや違う俺はこの人たちを知ってる。
「あ、ティリアか、あの異世界からきた!」
まるで何かの枷が外れたように、記憶が戻ってきていた。
「ふふん、ようやく思い出してくれたみたいね」
「へへ、わりぃわりぃ」
そういって、浩之は照れくさそうに頭を掻いた。
「でも変なんだよな、さっきまではほんとに全然わかんなかったんだけど、今ははっきりと分かるぜ」
「僕もだ、この島に来て浩之達と再会したときは、まるで浩之達のことおぼえてなかったのに」
「んー、そういえばあたしも、そうだったかなぁ」
「私もだよ」
「あ、それはもしかすると、復元作用のせいかもしれません」
なにそれ、と、ティリアがたずねると、エリアはあくまで仮説ですけどと前置きして話を始めた。
「あのですね、この前の事件でこの世界は大規模な異世界からの干渉を受けましたよね」
「ああ、確かにあれは凄かったよな」
破壊伸ガディム、その姿を思い出したのか、体にかすかな震えが来ていた。
「ラルヴァ、私たち、そして破壊伸ガディム、これらによって受けたダメージはこの世界にとってもかなり大きな物だったんではないでしょうか」
「まぁ、確かによその世界から侵略を受けるって言うのは大っきいダメージよねぇ」
「たしかに、無理矢理ってのは良くないな」
「ヤダ、ヒロくんってば」
と、沙織がほほを赤らめ、肩に乗っていたコロポックルも、意味もわからず同調してほほを赤らめた。
「とにかく、そういった干渉によって起きた空間のひずみを、自然と修復しようという力が働くわけです」
「それが、なんでオレたちの記憶まで消しちまうんだ?」
「多分、ダメージが大きかった分だけ、過剰な反応が出てしまい空間だけでなく他の要素も巻き込んで、
私たちが与えた影響をできるだけ減らそうとした結果、浩之さん達のようにこの前の事件に関わった人間の記憶にも干渉が起きて、
今回みたいな影響が現れたんじゃないかと思うんです」
「事件自体が夢だったかのように思い込んじまったってわけか」
「ええ、でも、それが、私たちという”存在”が再び現れた事でカムフラージュが崩れて、
人間でいうフラッシュバック現象のようなものこの世界に起きたんじゃないかと思うんです」
「なるほどねぇ」
そうは言ったものの、よく分かったような分からないような表情を浮かべるしかない一同。
「で、特に浩之さんや、祐介さんは他の方より事件に深く関わっていた分、私たちのことを思い出すのが遅れて、
沙織さんやあかりさんはかかわりが薄かった分私たちがこの世界に来ただけで記憶が取り戻せたんじゃないかと思うんです」
「まぁ、細かい事はどうでもいいわよ」
難しい話は終りとばかりに、ティリアがいう。
「とにかく、思い出してくれたんならそれでいいじゃ無い」
満面に笑みを浮かべてそういった後、不意に真面目な顔になる。
「ところで、浩之たちに一つ質問があるんだけど」
「何だよ・・・」
「ココはドコなの?」
ズルッ、と思わずこける浩之たち。
結局、ティリアたちに道すがら事件を説明しつつ武器博物館への道を急いだ浩之たちであった。
【藤田浩之、長瀬祐介、神岸あかり、新城沙織の四人がティリア・フレイ、サラ・フリート、エリア・ノースらと再会】
【所持品追加:パーティの写真】