中央線下り大月行き快速列車車内
『……当列車は只今、国分寺駅付近で発生した人身事故のため、運転を見合わせて
おります。お急ぎの所、大変申し訳ございませんがしばらくお待ちください……』
あーあ。帰るのが遅くなっちゃうよ。
中央線はよく止まるなんていうけれど、本当にいい迷惑だよ。
なんでも、前の電車が駅を出た所の踏み切りで飛び込んできた人をはねたんだって。
自殺の名所なんて言われているけど、そんなのはよそでしてよね。
せっかく平和な1日だったかと思ったら帰りの電車でこれなんだから。
しかも夕方だから人が多くてたまらないんだけど。
眼鏡がずり落ちそうになったので、慌てて眼鏡を直そうとしたときに前の人がぶ
ら下げていた新聞が目に入った。スポーツ新聞みたいだけど、大きな写真があった
よ。どこか南国の島みたいだけど、文をみたら空想のモンスターを集めたテーマパ
ークということだった。近日オープンするという事みたい。開園したら遊びにいこうかななんておもってみたり。
新聞には、なんでもオープンに先駆けて103人のモニターを集めて実際にパークを体験してもらう試みを行っているってあったけど、
そのくだりでなんか妙な記事を見つけた。
それはこのテーマパークをプロデュースした人についてなんだけど、新聞には
その人に対してあまり言い印象をいだいていないと思える記事が載っていた。
その人の名前は『超先生』。
記事にはその人の経歴が書かれていたのだけど、海外のトップレベルの大学で
遺伝子の研究で名をあげて、人にはまったく思いつかない発想をすることで有名
なんだけど、その反面、人格には大いに問題があって、今まで何回も危険なことをしてきたという。
かつてどこかの国で実験と称して、一つの集落の住民の遺伝子を無理矢理いじくったあげく、
その村人同士で殺し合いをさせたとかで、その国では指名手配になっているっていうんだよ。
本当だったら、そんな人が作ったテーマパークに行く気も失せるんだけど、
書いているのがスポーツ新聞だからね。思い切り「?」ばっかりだから。
もっとも、わたしにはどうでもいいことだけど。
「……おいおい、電車にはねられた奴人間じゃないんだって」
「犬コロをはねて1時間もストップかよ。本当逝ってよしだな」
「じゃなくて、運転手は人をはねたかと思って確かめてみたら、人だったんだけど……」
「だったら何なんだよ」
「背中から羽が生えていたんだと」
「まさか、冗談もいい加減にしろよ。まったく面白くねぇぞ、それ」
「いや、マジなんだって」
「ふざけんなよ。鳥人間でもはねたってのか? おめぇ、その記事の見すぎだろ」
サラリーマン風の男の人がキレながら、わたしの目の前にあったスポーツ新聞を
ひったくると、もうひとり男の人に見せ付けていた。
喧嘩はやめてよね……。
そのときだった。
それまで騒がしかった列車の中がさらに騒がしくなる。
「おい! あれ見ろよ!!」
その声とともに車内は一気に静かになった。もちろんさっきまで喧嘩していた
2人組みもすっかりだまってしまって、目を見開いてホームの方に目が釘付けになっていた。
わたしも窓からホームを眺める。
ホームの上にも人だかりが出来ていて、その間を縫うように救急員の人が担架
を担いで運んでいたのだが……その担架に寝かされていたのは……。
「だからマジっていっただろ……」
「ああ……」
さっきの2人組みの呆然とした呟きが聞こえる。
そうこうしているうちにも救急員によって担架は駅の外へと運び出される
――担架に乗せたシーツの間から大きな羽をだらしなく垂らしながら……。
【清水(以下略) 中央線下り大月行き快速列車に乗車していたが、人身事故の為に
電車が立ち往生してしまう。もっとも、不参加なのは相変わらずだが(w】
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