単独飛行
道沿いの林の上スレスレを、一人の少女が飛行している。
牧部なつみのココロ・・・
・・・以前ならば「抑圧され、剥離したもう1人の彼女」と表現できたが、
彼女がココロを受入れた今では「魔法による幽体離脱」と表現した方が正しい。
彼女は今、誰か人――できればスフィー――を探してさまよっている。
本当ならば、もっと上空から大声を出していきたい所だが、
空を飛ぶモンスターがいないとも限らない状況ではこの高さが限度だった。
・・・第一、これ以上高いところにいくと風が強くなって・・・・・・
・・・・・・まぁ、そういう事である。
彼女の本体は今、停車したジープの助手席で眠っている。
隣の運転席には宮田健太郎が座っているものの、他には誰もおらず、
その健太郎もまともに動ける状態ではなかった。
・・・・・・話は少し遡る・・・。
「よし、交渉成立だな!」
男2人怪しいひそひそ話をしていたかと思うと、
突然そう言って宮田健太郎は運転席を飛び出した。
「えっ?トレードって・・・?」
「こう言う事!じゃあなっスフィー!」
手を振りながら前に止めてあるもう一台のジープに向って走り出す。
「あ!こらっ!
けんたろーーーーっ!!」
「そう言う事で、よろしく!」
空になった運転席に、素早く折原浩平が乗りこむ。
「浩平ーーーー!!」
「うわっ!こら!
そんな所に立ってたら発車できないだろ!!」
「あの・・・私代りましょうか?」
「あ、ありがとー牧部さん」
「ぐあああああっ!
交代した意味ねーじゃねーかっ!!」
――ガチャガチャッ!
「千紗ちゃん!鍵開けてっ!」
「にゃ〜開かないですよ〜〜」
「甘いっ!後部座席の鍵はロック済みだ!
ほらっ!なつみちゃん、早く助手席に!」
――バタン・・・ガチッ!
「あーーーーー!もう!
どうなっても知らないんだから!!」
「大丈夫だって。
コースも同じだし、次に停まるまでだから。
ほら、早く向うの車に乗らないと置いてくぞ」
――ザ・・・ザザ・・・
「放送・・・ですね・・・」
微かなノイズを聞きつけた天野美汐の声に、全員が同時に耳を傾けた・・・。
『よく集ってくれた、103人の勇者達よ・・・・・・
・・・・・・真のモンスターパークの開園を宣言します』
・・・・・・放送が終るのと、スフィーが自分の車に乗り込むのはほぼ同時であった・・・・・・
千紗と美汐が振り落された後、フェンスに擦り付けて何とかジープは停止した。
しかし、魔力の供給を失ったまま暴走ジープを制御し続けた健太郎がダウン。
ジープも路肩にはまって身動き取れなくなったため、
本体を無防備にするリスクを負ってココロに来た道を戻らせているのである。
(スフィーさんの車はどこにいったんだろう・・・
・・・それに、天野さんはどこに・・・塚本さんはまだいるかな・・・)
千紗よりも後に振り落された美汐は、そのポイント付近にはいなかった。
そしてもうすぐ、千紗が振り落された急カーブが見えてくる・・・。
そこに、千紗の姿は・・・・・・
「にゃぁ〜〜〜っ!!」
「!?」
【牧部なつみ 原作後。人格統一した故、ココロが出てる間は本体行動不能】
【宮田健太郎 全快前。無防備ななつみを護っている。でもふらふら】
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