少年@爆音



「起きろぉっ!」
「……ん、あれ?」
 高槻の怒鳴り声で、少年は目を覚ました。
「あれ、どうしてジープに乗ってないんだろう……」
 確か自動運転のジープで決められたコースを走りながら観光をするはず。
 観光中は危険なので、そのジープから降りてはいけないはずだ。
「お前が足元で伸びていると邪魔でしょうがないからな。移動させようにもジープが走っていては何もできん」
 不機嫌そうに高槻が言う。
 彼のすぐ背後に、停車したジープのドアがあった。
「ははは、わざわざ停車させてくれたんだね。ありがとう」
「んなこと言ってる暇があったらとっととジープに乗りこめ」
「せっかちだなぁ……」

 苦笑いしながら、少年はゆっくりと起きあがる。
 同じく苦笑いしながら高子が少年に肩を貸してやる。
「貴様がのんびりしすぎているだけだ。お前が乗るのは後部座席だからな」
「あの、私の席を譲りましょうか?」
「え、ほんとにいいの?」
 高子は「はい」と優しい笑顔で答える。
 少年の顔を蹴飛ばしたことを気にしているからではなく、純粋に人がいいから席を譲ったという事がその笑顔から見てとれた。
 というわけで少年はさっそく高子に礼をいい、何も気にする事なく助手席のドアに手をかける。
「ぁあ? 助手席に座ろうってのか、お前は。そこは高子の席なんだよ。野郎とガキは大人しく後に座っていればいい」
 高槻に腕をつかまれ、少年はそのまま後部座席に突っ込まれてしまった。
「あぁ〜〜っ! 高槻、嫌な奴〜〜っ!」
 元気そうな少女が高槻にづかづかと歩み寄る。
 そんな彼女を見て、「はわわ、喧嘩はダメですよー」ともう一人の少女が止めに入った。
「ダメだよ、嫌な時はちゃんと嫌って言わなくちゃ。折角高子さんが気を使ってくれたのに……」
 ジープに乗りこんでからも、少女はそんな事を言っていた。
 顔や体尽き、それにころころ変わる表情や言動からかなり幼く見えるが、年齢は少年とあまり変わりないのだろう。
「あ、そうだ! 君の名前は?」
 さっきまであれほど不機嫌だったのに、いきなり機嫌がよくなった。
 表情だけでなく、感情もころころ変わる娘なのだろうか。
「え? あ、えっと……」
「あ。こういう時は自分から名乗るものだよね。私の名前は三井寺月代。隣の女の子はマルチって言うんだよ」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
 紹介された女の子がペコペコと頭を下げる。
「で、君の名前は?」
「え、あー。えっと……」
「えっと?」
 不思議そうに顔を覗きこむ月代。
「もしかして、高子さんの蹴りの当たり所が悪くて記憶無くなっちゃった?」
「そ、そういうところだよ。思い出すまでは少年とでも呼んでおいてもらえるかな」
「思い出せないんならしょうがないね。よろしく、少年」
 あんな適当な解答じゃ、まだまだ突っ込まれるんだろうなと思ったが、月代はあっけなく受け入れてしまった。
 適応能力が高い……といっていいのだろうか。
 少年の、この企画始まって以来2度目の危機はこうして過ぎ去ったのであった。

「よし、じゃあ出発するぞ」
 先ほどの二人のやりとりで少し凹み気味の高子を尻目に、高槻がジープのハンドルを握る。
 結局空にバックは高槻の足元に置かれたままだった。
「あ、自分で運転してる! 高槻悪い奴だ!」
「お前らのせいで余計な時間を食ったんだっ! 見たい所だけ優先して回らせてもらうっ!」
 そう言うと、乱暴にサイドブレーキに手をかける。
『よく集まってくれた、103人の勇者達よ』
 そこで流れた怪しい放送。
 それと同時にジープのエンジンが急激な回転を始めた。
「なんだぁっ!?」
「と、とりあえずジープから降りた方がいい!」
 少年の言葉に、5人が一斉にジープから降りた。
 サイドブレーキが引かれたままになっているジープは、その場で物凄いエンジン音を撒き散らす。
 もしもサイドブレーキを戻すのがもう少し早ければ、暴走ジープで死のドライブをさせられる所だったはずだ。
「何が起きているんだ? それに、あの放送の意味は……」
少年達はまだ知らない。
 これから命賭けの危険なサバイバルが始まることを。



【少年・高槻・高子・月代・マルチ サバイバル開始】
【ジープはその場で暴走中】




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