少年@出発直後



「まいったっ! 俺はまいったあああぁぁぁぁぁっ!!」
 ホテルから出発してすぐ、一台のジープから非常に大きな叫び声が上がった。
「うるさいよ」
 高槻の足元に置かれたバックの中からもぞもぞと這い出し、少年が抗議をする。
「なぜだっ!? このジープは4人乗りだぞっ! なんで5人も乗っているっ!!」
「僕は招待されてないんだから、こっそりジープに乗らなくちゃならないんだ。だから僕は1人としてカウントできないんだよ」
「ふざけるなっ! なぜお前がジープに乗らなければならないっ!」
「まぁまぁ、現実とはいつもこんな風に過酷なものなんだよ。僕だって狭いの我慢してるんだから」
「過酷な現実っ!? これは過酷な現実のか!? お前が馬鹿なだけでは無いのかぁっ!!」
「ひどいなぁ。ナイスアイディアだと思ったのに」
 高槻の靴の踵がバックにめり込む。
「んぐふぁ…いくならんでもこれはひどいよ……」
 これだけ騒いでいるというのに後部座席の二人は少年の存在に気付かない。
 というよりも、周りの風景のあまりの凄さに高槻に負けないほどはしゃいでしまっている。
 助手席の女性だけが異変に気付いて足元を見ていた。
 自分の足元にある白髪の少年の顔に、どうしていいのか全くわからないといった様子であった。

「あ、やあ」
 女性の視線に気付いた少年が、痛さを堪え辛そうな笑顔を作って挨拶する。
「こ、こんにちは……」
 つられて女性も挨拶。
「こんな奴に挨拶する必要などないっ!」
 高槻は女性を怒鳴りつけ、再びバックに蹴りをくわえる。
「あうっ!」
「あ、革靴なんかで蹴ったら危ないですよ」
 高槻の方へ体を向け、女性があわてて注意をする。
「そうだよ。危ないよ。ねぇ、えっと……」
「あ、私は桑嶋高子といいます…って……」
「ん? あ……」
 高槻に体を向けるため、自然と股が開く格好になっている高子。
 そして、ついつい高子の視線を目で追ってしまった少年。
 少年の視線の先にはミニスカートをはいた生足がご開帳。
「きゃぁっ!」
「うわ、ごめ……」
 言い切るより早く、高子のサンダルの踵が少年の顔に食い込んだ。
 そしてそのまま、少年の意識は急速に閉じて行く。

 少年の命の灯火は、早くも消え去ろうとしていた……



【高槻・少年・高子他2名 出発】




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