暗闇に求めるは
熊と共に森の奥へと消えていく岩切たちを眺めるしかなかった初音ときよみ。
しかし、そこに現れたのは……。
「あ、梓お姉ちゃん!」
「初音……やっと見つけた」
柏木、梓。
初音の姉であり、鬼の力を持つものの一人。
その梓は、初音を抱きしめ、無邪気な笑顔を見せている。
が、その無邪気な笑顔もすぐに消え、木々のなぎ倒された森に鋭い視線を走らせる。
「初音、この森の有様はなんなんだ?」
「そ、そうだ! お姉ちゃん、岩切お姉ちゃんたちを助けてあげて!! 熊が……ッ!!」
間に合かどうかは分からない。
梓が出て言ったところで、どうにかなるかもわからない。
が……。
「なんだか知らないけど、分ったよ。何を倒してくればいいわけ?」
そのときはまだ、初音もきよみも、梓の異変など知る由もなかった。
一方その頃。
「はぁ……はぁ……ひとまずはここで休息をとるとするか」
「ですの……」
雨が溜まって出来たと思われる水溜りの水を手ですくって浴びながら、岩切はその薄闇へと視線を向けた。
この島において、このような鍾乳洞は自然のものなのか、それともこれもまたアトラクションの一環で作られた人工物であったのか。
それは分からないが、熊に追われた岩切とすばるは偶然見つけた鍾乳洞へと逃げ込み、熊の爪から逃れていた。
無論、一時的に休める、というだけにすぎない。外に出ればまだあの熊は潜んでいるだろうし、あの巨体ならば、どうにかすれば鍾乳洞ごと破壊すらできるかもしれない。
が、度重なる戦闘等で疲労した二人には、ここでの休息は砂漠のオアシスのようなものであった。
そうして、どのくらい休んだだろうか。
実際にはまだ数分しかたっていないのだが、二人にとっては随分な長さに感じられただろう。
そんな、静けさがあたりをつつんでいた。
その静寂を、さきに破ったのは岩切だ。
「すばる、だったか? 外にはまだ奴がいるだろう。かと言って、これ以上奥に進めば何があるかはわからない。どうする?」
「も、もしかしたらもう……巣に帰ったかもしれませんの」
「それはないな。まだ奴の匂いがぷんぷんする。大方、息を殺して餌が安心して出てくるのを待っているんだろう」
「そ……そうですのね……」
残るは沈黙。
そして、次に何かすばるが口を開こうとしたとき、それは響き渡った。
『グオオオオオォォォォォッッッッッッッッッ!!!!!!!!』
獣の咆哮。
いや、これは断末魔の叫び。
それに続いて『ズシ・・・ン・・』と、巨大な何かが倒れる振動。
そしてまた、静寂。
「い、岩切さん……今のは熊の……」
「死にたくなければ静かにしろ。熊以上にヤバイやつが……来る」
強化兵としての感覚か、それとも岩切花枝の女としての勘か……それが、警告を発していた。
熊が死んだとしても、次にここに来る奴はそれ以上に危険だ、と。
すばるもまた、岩切に近いものを感じていた。
まだ、本当の危険はこれからだ、と。
緊張が走る。
そして、その静寂を破るのは、入り口から聞こえてきた、声。
「初音に頼まれたから熊は殺してあげたけどさぁ。初音を危険に巻き込んだ償いは……してもらわないとねぇッッ!!」
その声の主が駆け出すのとほぼ同時。
「走るぞ!!」
「ですのッ!!」
岩切とすばるは、ぼんやりと入り込む光を頼りに、鍾乳洞内へと駆け出した。
その暗闇にすばるが求めるは、希望。
その暗闇に岩切が求めるは……水脈。
【巨大熊、死亡】
【岩切&すばる、鍾乳洞内で梓に追われる】
【初音&きよみ、三人を追い、遅れて森の中を移動中】
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