人間規格外
「ところで居候は何処まで行きよったんかいのお。全然帰ってけーへんで」
矢島との会話を堪能していた晴子は、不意にそんな言葉を吐いた。
「居候?」
「国崎往人さんって言って、とってもいい人なんです。ちょっと、無愛想ですけど……」
矢島の疑問の言葉を受け、女の子……神尾観鈴が答えた。
「トイレなんてそこらの茂みに隠れてせやえーのになあ。ほれちょうどそのへんの……」
相違って近くの茂みのひとつを指差した晴子の表情はそこで凍りついた。
同様に、矢島も、観鈴もまた、晴子の人差し指の指す方向を、じっと見ていた。
人型であることには違いない、だがしかし発達といって良いのかやたらとごつい骨格と、
理科室の人体標本筋肉構造編といった感じの外見が、それが人ではないことをはっきりと示していた。
「あ……ああ……お母さん……」
恐怖におびえきった声色で、観鈴が何とか言葉を搾り出した。
「……く……」晴子の表情も苦しそうにゆがむ。外見からして、それこそでこピンでもされようものなら
額を削り取られてしまいそうなやつを相手どって、何の武器も持たない人間3人では勝ち目がなかった。
「矢島いうたか、兄ちゃん。」
「時間稼げ、と。」
「わかっとるやないか。うちがジープ取ってくるから、あんたはなんとか観鈴を守ってくれへんか?」
「ここで断ったりできると思います?男冥利に尽きるシチュエーションですよこれは。」
「言うなあ。嫌いやないでそういうの。ほな……」
頼んだで!そう叫んで、晴子は駆け出した。
「……さあて……」
この、「ご自由にお取りください案内図」と大量の食料、それから小さなテレビとまあいろいろ。
これだけの武器で、あの化け物を食い止められるのだろうか。
矢島の頭を、一瞬だけ後悔が掠めた。
【晴子一行、上記の怪物と遭遇 晴子ジープを取りに行く 矢島と観鈴その場に残る】
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