(無題)
崖に沿って走るジープの脇を、大きな看板が横切った。
「お、竜の巣まであと15kmだってよ」
祐一の言葉を聞いて、ジープの中でしゃぼん玉を膨らましていた少女がその手を休める。
「竜だって。楽しみだね、美凪」
「……うん」
ドラゴンを自分の目で見ることができる。
少年の頃抱いていた夢が、今まさに叶おうとしている!
祐一と北川の二人は顔を向かい合わせては笑いあっていた。
ポケットから溢れ出て、すでに足元を埋め尽くすまでに至っている白い封筒の存在を存在すらも忘れて。
と、そこで突然響く不可解な放送。
『よく集まってくれた、103人の勇者達よ。私は周りから超先生と呼ばれている者です』
「な、なんなんだこの放送は?」
「どうやら、何かやばい事が起ころうとしているという事はなんとなくわかるな……」
後部座席には不安そうに体をよせあう美凪とみちる。
男である自分達が、しっかりと彼女達を守らねば。
祐一と北川の二人に決意が芽生えるのとほぼ同時に超先生の放送が終了した。
そして、ジープが急加速を始める。
「ぐっ! どうなってんだよ、相沢ぁっ!」
「知るかよって、うわ!」
ハンドルがグニグニと左右に揺れる。
自動運転のランプは、いつの間にか手動運転に切り替わっていた。
「ぐ、このぉっ!」
祐一は足元を埋め尽くす白い封筒をどかし、思いきりブレーキを踏み込む。
しかし車は減速するどころかいまだに加速を続けていた。
「まじかよ! まだ加速してるじゃないか!」
「北川、とりあえずハンドル抑えるのを手伝え! このままじゃ崖から転落するぞ!」
「ああ! で、美凪さんとみちるちゃんは大丈夫か!?」
北川がハンドルを抑えながら、ちらりと後部座席を確認する。
「うわ、いきなりやっちまった!」
「どうした、北川!」
「美凪さんとみちるちゃんがいないぞ!」
「何ぃ!? さっきの蛇行運転で吹っ飛ばされたのかっ!」
とりあえず、このジープをなんとかして止めなくては。
二人を探すにしても、自分達が生きていなくてはしょうがないのだから。
【祐一・北川は竜の巣へ
【美凪・みちるはジープから吹っ飛ぶ】
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