〜第5章(終幕)〜
イレーヌさんの熱がまだ治まらない…
僕は真剣な表情でずっと彼女の様子を見続けていた。
時より、看護婦さんが氷水を差し入れに来てくれたりで、
何とか僕自身安心感を取り戻せたけどね。
ふと、イレーヌさんは小さく僕に呟き出した…
「喉が乾いたわ…。アイスキャンディーみたいなもの食べたいね…」
僕は笑顔で、アイスキャンディーに代わるものを買い出しに行ってくると告げ、
早速病室をあとにした。
そういや…アクアヴェイルって、アイスキャンディーみたいな冷たいお菓子が
あるんだろうか…と、ちょっぴり心配を胸にしたけど、
可能性に賭けて街のあちこちを散策し始めたんだ。
港の方まで足を運ぶと、露店付近にジョニーさんとマリーさんの姿を発見した。
僕はすぐに、彼らの元へ駆けつけ、イレーヌさんの容態の報告を兼ねて、
アイスキャンディーみたいなお菓子が売られている場所をジョニーさんに尋ねた。
運良く、近くの食料品店でアイスキャンディーが売っていることを聞いて
安心している僕に、マリーさんも笑顔で励ましの言葉を頷いてくれたんだ…
「…そうか。イレーヌ、無事に元気を取り戻せたようだな。
彼女が退院したら、笑顔で迎えてあげよう、スタン…」
「はい!実を言えば僕、今後はイレーヌさんと共にやっていきたいと
決心していました。でも…」
「でも…どうした?」
「その……僕が一人の人を愛することで、他の誰かが傷ついてしまうのだろうかと…」
「そんなことないさ。始めは誰でも動揺を抱くけど、やがては互いに認め合える…
そう考えた方が安心できるぞ?」
「そのとおりだぜ。俺も昔フェイトとエレノアをめぐる決着をしたけど、
結果として彼女はフェイトの方に恋心を持っていた…。その事情を聞いて、
俺もすっかり諦め、フェイトに幸せを譲ったワケだからな…」
ジョニーさんにマリーさん…それぞれ辛い過去を乗り越えて、
今の幸せを手に入れたんだなぁと、僕は思っている。
今度は僕の番だな…
そして、いつか僕とイレーヌさんの祝福される時が来るのを
僕は一人、心で祈り始めていたんだ。
数日後にルーティとフィリアがやってくることをマリーさんから伺い、
アイスキャンディーの袋を片手に病室へ戻っていった。
病室に入ると、ようやく元気を取り戻した様子で、
イレーヌさんが起き上がって本を読んでいた。
「ただいま、イレーヌさん。約束のアイスキャンディーを買ってきましたよ♪」
「ありがとう、スタン君」
アイスキャンディーを片手に、僕はイレーヌさんにこれからについて提案を始めたんだ。
「イレーヌさん。イレーヌさんが退院したら、僕、時々ノイシュタットへ遊びに来ます。
それに…僕自身もイレーヌさんと離れたくないから……」
「スタン君…」
…あぁダメだ!これ以上言葉が出ないよ〜!!
一人で戸惑いを感じている僕に、イレーヌさんは嬉しげな表情で
言葉を返してくれた…
「ありがとう、とても嬉しいわ…。
これからは私も貴方と共に時を過ごしていきたい。私ももう一人ぼっちじゃないし…」
僕はイレーヌさんの温かい答えを聞いて、束縛から解放されたような喜びを感じ始めた。
アイスキャンディーを食べ終わると、イレーヌさんが食べていたアイスキャンディーの
棒に文字が記されているのを発見し、当たりクジであることをおしえてあげた。
「あっ!イレーヌさん、当たりクジですよ!やるじゃないですか〜」
「あら、本当ね。退院したら一緒に店に持っていきましょう♪」
「了解〜!」
僕はイレーヌさんの笑顔を見て、喜びで胸がいっぱいになったんだ。
イレーヌさんも、僕の心を温かく受け入れたみたいだしね…
イレーヌさんの熱も無事に下がり、退院と同時に
アイスキャンディーが売られている露店を案内することにしたんだ。
彼女の荷物を背負いながら病院を出て、港へ足を運ぶと、
そこには先日再会したマリーさんとジョニーさん始め、
ルーティ、フィリアの姿もあった。
4人とも笑顔で僕らを出迎えてくれた。
イレーヌさんは目に涙を浮かべながらも、自ら笑顔を返していた様子だった。
「皆、今まで迷惑をかけてごめんなさい。私、もう一度やり直すことに決めたわ。
スタン君と誓ったの、これからは助け合っていこうってね」
「スタン、あんたやるじゃないの〜!一人の人を全力で守っていく力、
私も憧れるわ…。私もそろそろ恋でもしようかしら〜」
「ルーティ…」
「そうそう!スタン、もしイレーヌを泣かせるようなことをしたら、私許さないからね!」
「わ…わかってるさ!」
すると、いつもどおりの僕とルーティの漫談に、皆一斉に爆笑し始めた。
それから、僕は皆の分のアイスキャンディーを買いに行き、
この日は皆で海のそよ風を満喫することにしたんだ。
海の水平線を点々と眺めていく中、突然一人ずつ驚きの声を発した。
「あっ!当たりクジよ〜!」
「私もですわ!」
「私もだぞ!」
「俺もだぜ〜!」
「あら、私も当たりだわ」
「スタン、あんたはどう?」
「…あっ!俺も当たりだ!」
皆、無意識に声をあげて笑い続けていたよなぁ…
しかし、皆で当たりクジを引いちゃうなんて、奇遇と言うよりは
幸せが訪れてきた象徴なのかもしれない。
友情と愛情、天秤に吊るしてみてどっちが重みあるのかなんて、
それは…人それぞれ思惑が違うけど、僕的にはどちらも同じくらいだと思うよ。
人間同士のふれあいってさぁ、いろんな感情があって成り立っていくものなんだよね…
僕だって、時には嘆きたい場合があるさ…
自分一人の力で解決できないことがあれば、必ず誰かの助け舟を借りることだし、
やっぱ人間って一人じゃ生きていけない、脆いものなんだよなぁ…。
それに、どうして人は人を愛するのか?っていうのも、
イレーヌさんと出会えたおかげで初めて知ることができたんだ。
イレーヌさん、僕は毎日リーネでの生活が忙しいけど、
今度暇ができたら爺ちゃんとリリスを連れてノイシュタットへ遊びに行きますね。
久しぶりの家族旅行も兼ねて、これから僕たちが上手くやっていける切欠を
持ちたいし、また闘技場でコングとの格闘ぶりを見せてあげたいもん。
そうだ!僕、最近料理の勉強を始めたんです!
毎日リリスに叩かれながらも、野菜の切り方とか少しずつ覚えていって、
先日初めて自分で料理して夕食を楽しんだんだ〜。
これからもっと料理を勉強し続けていって、いつかイレーヌさんをリーネに
案内する日が来た時にでも手作りの料理を食べさせてあげたい…
そして、やがて本当にイレーヌさんと暮らせる時が来るのを、
楽しみに待っています♪
|
|||
|
|