【ダリス…どうか死なないでくれ……】
スタン一行はスノーフリアに辿り着いた。
港へ足を踏み入れると、辺り一面の銀世界に魅了し始める。
そんな中、一人マリーは海の向こうの水平線をじっと眺め、
物思いに深けこんでいた…
「マリーさん、どうしました…?」
「…あぁ、いや。…ただ、このような景色を以前にも見た気がして…」
その時のマリーは、何か懐かしい思い出を浮かび出していたようだ。
すると、空から綿のようにふわふわと雪が降ってきた。
二人は雪を点々と見ながら頷き合う。
「あぁ……雪だ…」
「もしかして…、雪を見るのが珍しいのですか…?」
「あぁ、何気に懐かしさを感じるのだ…」
スタンは心の中で、この切欠でマリーの記憶が戻れたらいいなぁと
期待を募らせていた。
ハイデルベルグへ繋がる森林でウッドロウを救出したのち、
一向はウッドロウの指示に従い、裏ルートを通って都への潜入を試み始める。
気温がかなり低く、毛皮のマント無しでは流石に凍死してしまうくらいである。
予めスノーフリアでマントを購入してから、路へ向かい始める。
約半日を費やして、ようやく平地へ出ることができたが、
目前に見えたのはハイデルベルグではなく、一つの小さな町並みだった。
ところが、マリーは無意識に町の中へ入っていく。
それを心配そうに、スタン達は彼女のあとをついていった。
「マリー、一体何処に行っちゃったの?!」
「そういや確か、港で雪を見て突然物思いに深けてたもんなぁ…」
ルーティが多少苛立っているのを、しぶしぶスタンはフォローをする。
しばらくすると、玄関が開放されっぱなしの民家を発見し、
スタン達はその家に入っていくと、マリーの姿があった。
どうやら、彼女は失っていた記憶を一つずつ辿り始めていた様子だ。
タンスの上に生けられているピヨピヨの花…
確かあの人がよく摘んできてくれていた。
本棚に並べてあるいくつかの本…
読み書きが出来なかった私に、あの人は親切に勉学を教えてくれた。
…あっ、このキッチンでよく二人で楽しく料理していた。
あの人は私の里親のようで、大切な人だった…。
あの人は今何処にいるのだろうか……
「マリーさん?」
「…あぁ、すまない。ただ…私の中で失っていた記憶が少し浮かんできたんだ…」
「大丈夫ですよ。必ず、いや絶対に記憶が戻りますから」
「ありがとう、スタン…」
心配そうなマリーの表情を見て、スタンは元気付けをしてあげる。
ルーティ達の表情にも、今のマリーの心境に若干の動揺が現れていた。
ハイデルベルグに着いたのは、その次の日だった。
城の出入口の状況を遠くから観察したのちに潜入を企む。
あの城の奥にグレバムが潜んでいる…
一刻も早く、奴の活動を阻止しようと、一目散に突進していく。
しかし…、そこで衝撃的な再会が発生した。
城から一人の男が姿を現し、スタン達に問いかけを始める…
「君達、ここにどんな用事だね?」
するとマリーは駆け足で男の目前に足を運び、焦ったように頷く。
「ダリス!探していたぞ。さぁ、一緒に帰ろう…」
「お前は何者だ?私に何の用だと言うのだ?」
「わからないのか?私はマリー。お前の妻だ…」
「何でたらめなことを!よい!お前だけ同行してもらおう…」
「ちょっと!マリーを何処に連れて行くっていうの?!」
「黙れ!この女に詳しい事情を話させてもらうのだ!」
「マリーさんに無駄なことをするな!!」
マリーをガードしようと、スタンとルーティは抵抗を企むが、
数人現れてきた兵らに取り押さえられてしまう。
ダリスという名の男に連れられたまま、マリーは近くの詰め所まで行ってしまい、
スタン、ルーティは地下の牢屋に放り込まれた。
二人はマリーのことばかりが心配で、壁を通して相談事を始める。
「ねぇ、スタン。マリー、大丈夫かしら…?」
「そうだなぁ…下手して命を落とさなければいいんだけど…」
時間が過ぎていく度に、二人は益々心配を隠せなかった。
「そういえば、前もこんなふうに牢に入れられたよなぁ…」
「あれは確か、あのクソガキが……」
するとルーティが装着していたティアラから電動が発し、
直後リオン始めとする他の3人が助けに現れた。
「…全く、折角助けに来たと言うのにこのざまとは……」
「えっ?どうしてこの場所がわかったんだ…?」
「お前らの頭に付けているものを忘れたのか?」
「…あぁ!これで俺達の話していることとかが感知できるんだぁ…」
「それよりも!マリーがどうやら徴収されているようなのよ!早くしないと!」
「わかったから少し落ち着け…」
リオンが少し渋い表情で牢の鍵を解くと、5人は階段を上っていき、
マリーが取調べを受けている部屋の直前まで辿り着いた。
そこから聞こえる男女の意見の言い合いが、凄まじく聞こえてくる…
「お前はダリス、そうだろう?」
「あぁ、確かに私の名はダリスだ…」
「それなら…この剣に見覚えあるか?」
突然ダリスはマリーの持つ剣を見て、激しい頭痛を発しだす。
だが、それを他所にマリーは話を続けた。
「この剣は、私とお前との絆を証拠している唯一の手掛りになっているのだ…」
「絆?何を言っているのだ?私の妻は確かもうすでに死んでいるはずだ」
「死んでなんかいない。お前の目の前にいる私が妻なのだ」
「死んだのだ!!」
「なら、サイリルが災難に襲われた直後に、どうして私を
お前と一緒に戦わせなかった?何故私を一人にさせたのだ?」
「サイリルが災難に遭ったことなんて、私の覚えている限り有り得なかったぞ?」
すると再び、ダリスは激しい頭痛を発し、彼もまた心に眠っていた記憶を
取り戻した様子に変わり始め、マリーは静かに泣き出しながら頷く。
「寂しかったぞ…、お前に突き放され、記憶まで封印されて、
私は一人でどうしていいか…わからなかったぞ…」
「マリー…悪いが私自身選んだ道を邪魔させるわけにはいかない!!」
「お願いだ!無駄な抵抗はもう止めてくれ!!」
「うるさい!黙れ!!!」
ダリスはいきなりマリーを張り倒し、
騒音に気付きながらスタン達は部屋へ入っていく。
「何だお前らは?!邪魔はさせないぞ!!」
剣を抜きながら、ダリスは侵入してきたスタン達に怒鳴り散らした。
ウッドロウもまた、ダリスに真実を語りだす。
「ダリス殿、貴方は利用されているだけです!もう一度ご自身を振り返って
みたらいかがです?貴方にとって大切なものは何なのかを…」
「悪いがこれまで私が望んでいた理想を、踏みねじらせるマネはさせない!」
ダリスは兵を数人呼び出し、攻撃体勢に入った。
少しでも阻止して、彼らを止めようとスタン達も迎え撃つ体制に入る。
ダリスの剣の腕前は一人前以上に凄く、何度もスタンらが技を発しても
決してダメージを食らうこともない。
ルーティ、リオン、そしてウッドロウが離れた場所へ動き、
ダリスの隙を見ながら攻撃を試みる。
「飛燕連脚!!」
「ふっ!そのくらいの技で私が懲りるとでも思うのか?甘いな!
これでも食らえ…一閃!!!」
ダリスが素早い一突きを放った瞬間、ウッドロウの放った矢がダリスの肩に
命中し、片手で肩をぎっしり掴みながらダリスは床に倒れこんだ。
そして、目に見える愛しきマリーを見つめながら悲しそうに頷く…
「…マリー、すまなかった……。ただ、お前を災難に遭遇させたくない
だけの思いで、記憶までも封じるようなことをしてしまって……」
「いいのだ、ようやく互いの記憶を取り戻せて、何より嬉しいぞ…」
「マリー……」
矢が刺さった肩からの出血が激しいせいか、ダリスは意識を失ってしまう。
彼を優しく抱きながら、マリーは泣き崩れた。
「ううう……ダリス………」
ルーティは何とか元気付けしようと、慣れた仕草でダリスを負ぶさり始め、
マリーに言葉を頷く。
「マリー、もう泣かないの。あんたの旦那も一緒だから…」
その場を後にし、スタン達は城の地下通路へ繋がる裏口へ向かう。
裏口を入った直後、男の声が聞こえ、フィリアが突然恐怖感を抱き出す。
「そこにいるのは誰だ?!」
「きゃー!出たーーー!お化けーーー!!!」
フィリアの悲鳴に苦笑いしながら現れたのは、賢兵ダーゼン老だった。
ウッドロウの顔を見て、いつもの優しそうな安心顔に戻った。
「はっはっは…お化けだなんてとんでもない。私はこの城の兵じゃよ…」
「ところでダーゼン老。住民の皆は無事だろうか?」
「心配要りませぬ。それより、少しお身体を休まれてはいかがでしょう?」
「ありがとう。ついでに、こちらのダリス殿の看護も頼もうとするか…」
こうして、ダーゼン老の案内により、一向は住民が待機している部屋へ
足を運んだのである。
部屋へ入ると、スタンは自分の持っていたグミをマリーに差し出し、
すぐに摂らせるよう説得をしてあげた。
「もう大丈夫ですよ、マリーさん。このグミを飲ませて、
暫く看護してあげてください」
「ありがとう…」
ダリスの傷口を手当てしながら、ルーティも優しく言葉を頷く。
「多少深い傷だけど、そっとしておけば完治するわ。
マリー、あとは私達に任せて、あんたは旦那の傍にいてあげるんだよ」
「わかった…。どうか、あとはルーティ、よろしく頼むぞ…」
マリーはスタン達を見送ると、ダリスの様子を見ることにし、
近くに立っているダーゼン老も若干表情を曇らせていた。
「マリー殿とおっしゃったね?貴方は今、ご自分の愛する人への思いで
心が一杯のようで…」
「あぁ。互いの記憶が戻って、もう一度本当の幸せを考えなくては
ならないからな…。それまでの望みは、いずれにせよダリス自身を残酷に
するものにしか考えられない…今思えば……」
マリーの言葉に、ダーゼン老も少し人間としての情けに動揺している様子だった。
人は戦争や災難が起きる度に、それぞれ物事を判断し、
そして結果を追求するものであろう。
しかし、失ってしまうものと守るべきものが世には存在している。
それらをどのように己自身で区分けするかによって、
運命も左右されるもの。
マリーにとっても、この出来事はかなりの騒動でもあり、
真の幸福を取り戻せた切欠となっただろう…
ダリス…もうお前と離れたくない……
意識が戻ったら、一緒にサイリルへ帰ろう。
そして、また二人で料理を楽しもうじゃないか…
〜あとがき〜
またまた今回、短編を執筆してみたわけですが、どんなテーマにしようと
考えつつ、マリーの最愛の夫・ダリスの一命を取り戻せた場面をシリアスに
書いてみようと決めた所存です♪結構自分的にもこのカップリング好きですし、
何しろ、一人の女性として愛する男性へ心を募らせているマリーの心境が、
とにかくお気に入りなのですよ…><ま、まだまだ思いついた地点で
テーマフリーに短編でも書いて楽しみましょうかねぇ〜vv(ぉ
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