〜テイルズ小学校〜

ここはセインガルドの首都にある、ダリルシェイド小学校…
そこでは、子供達の将来を考えた上で、文理学以外にも武術・晶術の授業を行っているの
である。また、生徒自身で好きな授業内容を選択できる仕組みにもなっている。

ある日、二人の生徒が帰り道にて、明日の学校行事について語り合っていた。
「ねぇ、リオン先輩。明日やって来る先生ってどんな感じでしょうかねぇ〜?」
3年生のチェルシーが5年生のリオンに頷いた。
「ふっ…、どんな先生が来ようと、僕達の勉強には何も変わりないだろうに…」
リオンがあっさり答えを返すと、再度チェルシーは頷く。
「もう!どうしてリオン先輩はいつもそうなんですか〜?!
もっと皆みたいに、楽しくできないのですか〜?」
「僕は僕の考えだ。それに、明日の学校行事の心配をする余裕があるのなら、
家に帰って宿題をして過ごした方がまだいいほうだ…」
「つまんないの〜」
「勝手に言ってろ…」
こうしてチェルシーはぷいっとリオンからそっぽを向いてしまう。
「いいですよ〜だ!明日リオン先輩のクラスの皆に悪評を持ち出しますよ〜だ!」
「おい!こら待て〜!!」
チェルシーがそう頷いて走り出すと、リオンもすぐさま追いかけ始めた。
道の横は川の堤防になっていて、他の生徒が腕白に走り回っている光景が見える。
また、堤防に屈みながらパンを食べている老人がその様子を見て、
子供は活発で初々しいと心で感じていた。

次の日、朝の集会が体育館で行われた…
クラス別にそれぞれ縦1列に整列し、集いの始まりを待つ。
間もなく、ステージに校長のクレメンテが上がってきた。
「えぇ…今日は皆さんに新しい先生をご紹介致しましょう…。
ケルヴィン君、こちらまで…」
「はい。…」
すると、ステージに小麦色の肌に銀色の髪をした、背の高いスーツ姿の男が現れた。
一目にて、男子が不思議そうな顔をし始めたのとうらはらに、
女子は突然甘いマスクに溜息をつき始める。
「皆さん、こんにちは。今日からこの学校に就任することになった、ウッドロウ・ケルヴ
ィンです。ファンダリアから来ました。私の担当する科目は、文学と弓術です。これから
生徒の皆さんと楽しい学校生活ができるよう、どうか宜しく」
チェルシーは列の前のほうで一人呟く…。
「ウッドロウ先生か…。優しい先生なのかなぁ…?」
チェルシーはまだ3年生なので、科目を自由に選択することは出来ない。
しかし、心の中である決断を思いついていた。
自分も弓術の勉強をしてみたい…と。

集会も終わって、クラス別にそれぞれ教室に戻り、授業開始の時間を待ち始める。
今日のチェルシーのクラスは、1時間目が文学の授業だった。
授業開始のチャイムが鳴り、チェルシーは机の上に教科書、ノート、そして筆記用具を
並べ、授業に向かう姿勢をとり直す。
ガラガラガラ……
教室のドアが開き、先ほどのウッドロウが教室に入ってきた。
「皆、おはよう。今日から君達の文学の授業を担当することになった。どうか宜しく。
さて…、それでは授業を始めるとしよう…」
ウッドロウが自分の持っていた教科書を開き、授業に取りかかろうとした時、
生徒の何人かが彼に質問を持ちかけ始めた。
「先生!初めてでまだ先生のことよく分からないから質問〜!
どうして先生の顔って真っ黒いのですか〜?」
すると突如、クラスで笑い声が生じる。
「先生の名前、ウッドロウって変な名前〜」
笑い声が益々エスカレートする。
…そこに、チェルシーがふと椅子から立ち上がり、クラス全員に叫び出した。
「皆、先生をバカにしないで!!」
そう言って、突然教室を抜け出していった。
ウッドロウも心配になって、チェルシーの後を追い始める。

その時別の教室で授業を受けていたリオンは、
ふと脇の廊下を通過するチェルシーを見て不思議そうに首を傾げた。
「どうしたんだ…?チェルシーの奴…」

チェルシーは校舎の裏で一人泣き出していた。
そこにウッドロウが近付き、優しく話しかける…。
「大丈夫かい?」
すると涙を拭いながら、チェルシーは答えを返す。
「だって、皆がウッドロウ先生を……」
「ありがとう。私を思ってくれて…」
そう頷くと、ウッドロウはチェルシーの小さな頭を優しく撫でた。
「でも、先生は弓術も教えているんですよね?私、4年生になったら絶対に弓術の授業を
選びます。そして、一生懸命頑張って、先生に誉められたいですぅ〜」
「ありがとう、チェルシー…」
こうして、1時間目が更けるまで、二人は校舎の裏で時間を費やしたのである。

今日1日、チェルシーは心のショックが激しかったのか、学校が終わるまで保健室で過ご
すことになった。養護教諭であるイレーヌから、温かい励ましを受け、やっとのように落
ちつきを戻しつつある。
「チェルシーちゃん。貴方の気持ち、先生にも解る気がするわ。先生もね、学生だった頃、
憧れの先生がいたわよ。その先生に少しでも認められたいと強く願い始めて、一生懸命勉
強を頑張っていた時期を過ごしていたのよ。チェルシーちゃんにもやがてそのチャンスが来るわ。
皆に負けないように頑張るのよ♪」
「ありがとうですぅ〜。私、来年弓術を勉強するのを決めたんですけど、来年になったら
もしかしてウッドロウ先生とお別れになっちゃうかもしれないし…、そうなったらもう会えなく
なっちゃうって考えると寂しいですぅ〜」
「きっと大丈夫よ、チェルシーちゃん。それなら、今からウッドロウ先生にお手紙を書く
のもいいかもよ」
「お手紙〜?そうですねぇ…、是非書いてみますぅ〜」
「頑張って♪」
こうしてチェルシーは、保健室で1日の学校生活を送った。

その日の学校の帰り道…
今日はリオン一人で帰ることになった。
リオンは帰途、堤防でチェルシーが何かをやっているところを見かける。
「あいつ、何やっているんだろう?…」
そう呟くと、早速チェルシーの元へ駆けつけていく。
どうやらチェルシーは、自分で器用に作った弓矢の模型で、置き捨てにされた木の看板を
的代わりに弓術の練習をしていたらしい。
「私ぃ、絶対に頑張るんだから〜!」
そう言いながら、一生懸命に的へ矢を的中しようと頑張っているチェルシーに、
リオンが苦笑いしながら話しかける。
「全く、お前も不器用だなぁ…」
「余計なお世話ですぅ〜!」
むきになってるチェルシーの弓をさり気に取り返すと、リオンが1発、的に的中してみせた。
「弓もなかなか使えるなぁ…」
「リオン先輩すご〜い!先輩って剣術の授業を選んでいたのではなかったですか?
でも、すごい腕前ですね〜!」
「剣であれ弓であれ、目標を狙うには集中力が要るものだ。晶術もそう…」
「集中力…ですかぁ…。私にもできるのかしら…?」
「出来ない人間なんていない。それは自分の気持ちの持ちようなだけさ…」
二人の会話しているところに、向こう側からウッドロウが現れてきた。
「君達、ここで何してるんだい?」
「あっ!先生〜!私、早速弓の使い方を練習していたところですぅ〜」
「ははは…、流石チェルシーらしいなぁ…」
すると、ウッドロウは自分の持っていた弓矢で、チェルシーが的代わりにしていた木の看
板に見事に的中してみせた。
「すご〜い!ウッドロウ先生カッコイイ♪」
「これ以外にも、まだまだ技の種類があるんだよ。それには、科目を選んでからの楽しみ
だな…」
「私、絶対に弓術の勉強してみたいですぅ〜!勿論ウッドロウ先生に教わりますぅ♪」
「もしよかったら、授業以外の時間であれば特別に教えてあげようか?」
「わぁ〜い!ありがとうございますぅ〜!でも…、いつか先生とお別れする日が来るって
考えると、やっぱり寂しくなりますぅ…」
「はは、大丈夫だよ…。私もずっとこの街に過ごすと思うからな…」
「先生…、私先生大好き♪」
そう頷くと、チェルシーは跳ね上がってウッドロウの頬にチュッとキスをする。
あまりのチェルシーの積極性に、リオンはふと溜息を漏らしていた。

私、絶対に頑張る…
ウッドロウ先生のためだけじゃなく、私のこれからのためにも…

こうして、小さな愛情が芽生えたのであった…。

 

 

〜あとがき〜
こんにちは、管理人の椿子です♪
今回、またちょっと変わった短編小説を書いてみました。
ちなみにこの作品は、水無月とむ様からいただいたイラストをヒントに
私の趣味を交えて、ストーリー化してみたのです☆
チェルシーのウッドロウに対する強い愛情を、小学生の気持ちになって
考えてみて執筆してみましたので、ゲーム本編の内容を頭から抜いて
読んでいただけるよう、お願い致します(爆)

 

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