勝者 アーケード 1262票
                        
                        
                        敗者 台湾 1020票

本選第51組(6/28)
Dz
◆.Dz2qTUo
氏 アーケード板入場
ふと目を閉じてみる―――――

『勝者、アーケード!』
2週間前の激闘の場面が次々に脳裏をよぎる。

萌えと燃えのぶつかり合い。
意地と意地のぶつかり合い。

―――――楽しかった。

勝った負けたの問題ではなく、純粋に楽しかった。
相手の猛攻、俺の反撃、観衆の声援、そのどれもが快感として俺の中を駆け回る。

一方は、愛する者の為その身を捧げた。
一方は、強敵(とも)との契りを果たすべく戦い抜いた。
相容れない二つが複雑に絡み合ったとき、その勝負は忘れられぬ快感をもたらした。

『認めよう、君という漢がいたことを』
『私達に悔いはありません。3回戦もがんばってくださいね』
傷だらけになりながら交わした握手の感触は、今でもこの手に残っている。

「台湾、か…」
ライトノベルとの2回戦終了後、観客席にいたこちらをきっと見据えた彼女の視線。
その背後にたたずむ巨大な狼、俺を貫いた鋭い眼光―――只者じゃない。
傷が疼きだす。先の戦いの傷は、その激闘を忘れるなということだろうか、ほとんど癒えぬまま残っている。
だが、正直この疼きが心地よく感じられるのは少々危険かもしれない。

―――――楽しんでいる。

命がけの勝負を、圧倒的な恐怖を、わくわくしながら待ちうけている。
われながら危ない奴だ…ふと苦笑いが浮かんだ。
今まで戦ってきた好敵手たちの思い・意志・信念―――それらが拳を通して蘇ってくる。
その思いが純粋であったからこそ、ここまで甘美な感覚をもたらしてくれるのだろう。
これから始まる、23時間の快楽。今回も目一杯味わってこようじゃないか。

「時間だな―――」

控え室を出て、花道を歩き出す。
一歩、また一歩。踏みしめるたびに胸が激しく踊る。
震えが止まらない。待ち切れないのだ。
全身が総毛立つ。体温が急激に上がり始める。

「相変わらず、暑苦しいくらいに燃えているモナ―――」
―――――モナー。わざわざ見送りに来たのか。
「嬉しいんだよ、こうやって強い相手と戦えることが―――、単細胞だから、身体全体で表現が出てしまう」
「真剣勝負を純粋に児戯の如く楽しむ―――、その姿勢嫌いじゃないけど…やっぱりちょっと危ないモナ」
「全くだ、われながらそう思ってたところだよ」
軽い笑い声が薄暗い花道に響く。
「約束の時まで後わずか、先にブロック決勝で待ってるぜ」
歩みを始めたその時、不意に後ろから声がかかった。
「おーっと待った。次の試合の結果まで勝手に決められちゃ困るねぇ」

少年漫画…次戦、モナーと当たる強豪がなぜここに?
「シャア兄貴、園芸姉さんの仇は俺が必ず取る! 約束を不意にするようで悪いが明日の勝負は俺が勝ち―――」
言いながらこちらを指差し(ご丁寧に親指を下に向け)
「その次は、あんたの首もいただくぜ」
「こりゃまた威勢のいい決意表明だな。しかし…そういう挨拶は大好きだ」
「負けられないのは誰もが同じ、こっちも全力で勝ちに行くモナ」
「面白れぇ、こっちも燃えてきたぜ。明日はすげぇもの見せてやるよ…!」
両雄合いまみえる、といったところか。今日は俺の試合だというのにこいつらのほうが臨戦体制になってやがる。
やれやれ、これじゃどっちがこれから戦うのかわかりゃしねぇ。

「まぁ、その前にあんたが今日勝てるのかどうかだ。ここは一つ、お手並み拝見といかせてもらいますか」
モナーからこちらへ視線を移し、飄々とした雰囲気でこちらをうかがう少年漫画。
その表情からは余裕の色すら読み取れる。底の知れない奴だな。
「勝ち負けは問題じゃない、どれだけ全力でやれるかだ。ま、もっとも俺には…」
「『負ける要素はない』モナね」
「…台詞を取られちまったな」

微笑を浮かべ、振り向かずに歩き出す。次第に観衆の声援が大きくなってくる。
いよいよだ。走り出したくなる衝動を必死に抑える。
これまで戦ってきた、そしてこの先待ちうける、強敵(とも)達。
そいつらの思いに全力で応えるためにも…負けるわけにはいかない。
向こうももちろん、その心構えで挑んでくるはずだ。
頭の中でさっきのモナーの台詞がリフレインされる。
(『負けられないのは誰もが同じ』か。だったら…ぶつかるしかねぇよな)

闘場が見えてきた。頭のハチマキを締め直し、いざ、光の下へと―――。


歓声が、一段と高く上がった。

本選第51組(6/28)
Dz
◆.Dz2qTUo
氏 アーケード板勝利
―――――終わった。その瞬間頭が真っ白になった。
とりあえず花道へ戻ってきたが結果は聞き取れなかった。
あれだけの歓声だとまぁ無理も無いか。
足取りが重い。ダメージが相当来てるようだ。

「おめでとうモナ」

目の前にモナーがあらわれた。
「おめでとう…?俺は勝ったのか…」
「自分の勝負の結果も聞いてないとはよほど戦いに没頭してたモナねぇ」
「まぁこういう奴だから…少年漫画は?」
「もう控え室に入ったモナ。『待ってろよ』とことづけがあったモナ」
「そうか…んじゃ、客席行ってるわ。健闘を祈るぜ」
「もちろん、楽しみにしてろモナ」

モナーが去った後の花道で、俺は一人へたれこむ。
「さすがに今回は…しゃれになんなかったな…」
再び、頭の中が真っ白になった―――――。

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