棕櫚
国道の畑地の端で 棕櫚の木が残されたまま立っている
さわさわと青い葉をひからせて
寒風が吹きすさぶ季節に
この国の気候はどうだい
冬にしては日射しも充分さ
国道沿いをゆく車の排気ガスも吸い込んで
緑の手は てらてらと輝いている
夜も電灯の光で明るいものさ
そんなに寒くもない
おまえさんこそ 暮らしの方は大丈夫なのかい
ああ 君と同じように一人で何とかやっていけそうさ
それにしてもずいぶん寂しそうじゃないか
国道沿いの道で少し私は 棕櫚の木と会話すると
きらきらとした緑の手の葉に送られて
小さな菜園の角を曲がり
もときた道をもどっていった
冬のすすき
枯れたすすきの原で
白い穂がさわさわと揺れていた
誰もが もう通らぬはずの高原の道で
すすきの穂は まるで白髪の紳士のように
遠くで 手をふっている
もういなかった誰かに お別れを言っているようで
誰にも認められるもののないまなざしで
軽い身のこなしだ
やがて さえわたる空に
つよい光の月が 出迎えるように昇ってきた
すべてが凍る前に
白いすすきの穂は皆 波を打って
楽しげに腕をふっている
洗う水
あなたを洗う水が あらら
あなたの内から 体からこぼれていって
もう 外からはもどってこなかったとしたら
アララ
これは 単なる気象のせいか
人間のせいか
地球のせいか
アラフラ海から 現れていた水がなくなる
あちらは アラル海
大河の河口に水がない ・ ・ ・
あらら
あちらからも どちらからも
大変なことになりそうなのです
ミレニアムと一緒に
あたらからもこちらからも 砂漠の問題がやってきた
水資源の問題は 作物の問題であり
動物の問題であり
文明の問題であり
環境の問題でありました
人類の問題と一緒に
乾いた時空が広がっていく
きららの水の国にすむ人人だけが
のんびりとしたことを言っています
あんなにあふれていた
アラフラ海の水が
なくなるといいます ・ ・ ・ ・
アンテナ
避雷針には 雷が落ちても
稲妻の形は現れなかった
稲妻は
雷とは無縁な
テレビのアンテナの形に現れている
電波塔の形にも
そろそろ
地球の形や 君たちの顔に現れてきても
よさそうなころだ ・ ・ ・
実際には
君たちの言葉は 避雷針ほどにも
この世界に 役立ちはしなかった
稲妻の形を持ったままの雷神の末裔として
君たちもまだ 人間の形をして現れなかった ・ ・ ・ ・
め
めがのぞいている
めが あなたのからだからのびて
のぞいていた
見えない手や腕を伸ばし
めが 上方へ向かってのびていく
潜望鏡になったまま
やがて
あなたのめが からだからはなれると
また あなたの体をのぞいていた
体から伸びた目が 上方に向かって
誰かに挨拶した
誰かの目も 空の中にのぞいていた
わたしは はじめから
あなたのことは知らなかったというかのように ・ ・ ・ ・
ピーヒ゜ングトム A子
ピーピングトムは 少年とは限らない
ピーピングトム A子は 結構すらりとした
すました美しい少女だ
今日もこっそりと机の下から
隣の少女のスカートに 手を伸ばしていた
少し白んでいる透明な指の先に 目を付けて
ミミズを這わせるようにして 少女をくすぐりにかかる
そのミミズは 少女と一緒に
キャッキャッとなきごえをたてて
トイレの中まで 指をつないで入っていく
スカートをまくり上げた少女のあしの下では
透明な青い舌がのぞいて笑っている ・ ・ ・
ピーピングトム A子が すましてトイレから出てきた後で
透明になった少女たちの秘密は 誰にもわからない
被害にあって飛び出てきた少女は
蛙のつぶれたような声を出しながら
怖がっていたのか喜んでいたのか
もう 誰にもわからない
トイレの中では つぶれた蛙の目玉だけが
とろんと床にとり残されていた
流しきれなかった少女たちの思い出と一緒に
ピーピングトム A子は どこの学校にも生息している
今日も私のそばで
緑のマントをつけて通りかかった
・ ・ ・ ・ ・ ・